運勢最悪 (後編)





「あっ・・・・・・・あ・・・・・・・・」

ため息といっしょにヤらしい声が漏れちゃう。
でも気持ち良くてもう。  止められない。
炬燵の中だから、狭いからオレは横向きに寝ていて、阿部くんはオレの後ろにいる。
阿部くんの大きな手が、オレの中心をきつく扱いている。
同時に後ろに入っている指も感じるトコロを集中的に刺激していて。

オレはもう恥ずかしいくらい前も後ろも濡れていて。
さっきから湿ったヤらしい音が吐息に混じって響いている。

「・・・・すげー濡れてんな・・・・」

・・・・・・・阿部くんの、 せい、じゃないか・・・・・・・・・・・・・

「おまえってホント、感じやすいよなぁ」

その言葉で、オレは思い出した。

「さっき、」
「え?」
「叶くんが、いる・・・・・・とき、」
「あー・・・・・・」
「阿部くん、 ひど、い・・・・・・・・」
「だってさ」

けろりと言いながら阿部くんは手を休めない。

「・・・・・ぅ・・・・・」
「叶に帰って欲しかったんだもん」

やっぱり、そうか・・・・・・・・・・・

「おまえだってそうだろ?」
「・・・・そんなこと・・・・・・・」
「だって正月に会った、 つってたじゃん!」
「・・・・・・・・・・・。」
「今日はオレ、楽しみにしてたんだけど。」
「・・・・・・・・・・・。」
「来たら、おばさんいねーしさ」
「・・・・・・・・・・・。」
「おまえは? そんなことない? オレだけ?」
「そんな・・・・・・・・こと・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある、けど

ふふっ  と嬉しそうに阿部くんが笑った。

「もう挿れたいオレ」
「ん・・・・・・」

オレも、いれて欲しい・・・・・・・・・・

「あ、ゴムしなきゃ」
「ここで、するの・・・・・・・?」
「ダメ?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「ベッドに行くの面倒」
「・・・・いい、よ・・・・・・・・・」

オレも、面倒だし。 というよりもう部屋まで歩けない。
阿部くんが寝たまま自分の荷物に手を伸ばしているのをぼんやり見てから、
オレはやっと解放できる期待でうっとりしながら目を閉じた。
修ちゃんには悪かったけど。
・・・・・やっぱり阿部くんとするの、 幸せだな・・・・・・・

なのに。

ピンポーン
     と玄関のチャイムの音が。

「え・・・?」
「げ」
「誰か、来た・・・・・・・・・」
「叶かな?」
「・・・・・誰だろ・・・・・・・・」
「無視しちゃえよ」
「・・・・でも・・・・・・・・」
「こんな状態じゃどっちみち出れねぇだろ?」

確かに、  とオレは諦めた。  でも。
こっそりと息を潜めるオレたちの耳に、続いてとんでもない音が聞こえた。

がちゃりと鍵の開く、 音。
続いて 「あら?!」 というお母さんの声。
真っ青になった。 振り返ると阿部くんの顔も引き攣っている。

「・・・お母さん、だ・・・・・・・・・・」
「早くねぇか?」
「早い・・・・・・・・・」

大焦りするオレと阿部くん。
慌てて炬燵から這い出てズボンを上げようとするけど、何しろ引っかかるもんがあるから
2人ともすんなりとはいかない。

「れーん!」

あれ? と不思議に思った。    入ってこない・・・・・・・・・・?
阿部くんが 「あ」 という顔になった。

「そうだオレ、チェーンかけた」

あ、そうなんだ・・・・・・・・でも。 てことは。

「は、外さなきゃ・・・・・・・・・・」
「待てよ、オレまだ穿いてねぇ!!!」
「オ、オレも」
「れーん、いないのぉ?」
「あ、はーい。 ちょ、ちょっと待って・・・・・・」

急いで答えながら必死でズボンを履く。
湿っていていろいろと気持ち悪いけど、仕方ない。
ものすごく情けない事態になったような気が。
でもとにかく何とか体裁を取り繕って、阿部くんも穿いたのを確認してから、
どうにかこうにか玄関まで歩いた。 (当然あまり上手く歩けなかった。)
シャツで前の辺りを隠しながらチェーンを外した。

「廉? 遅かったわね?」
「ごめんなさい・・・・。 あの、ちょっとトイレ、入ってて」

苦しい言い訳をしたりなんかして。

「お友達来た?」
「う、うん」
「そう。」

言いながらお母さんはどんどん居間に歩いていった。
そろそろとオレも後ろからついていく。

「こんにちは。 お邪魔してます。」

阿部くんは涼しい顔で挨拶した。  すごい・・・・・・・・・・・
(でも炬燵に入ったままで立ち上がらないのはきっと、見られたらマズいからだ)

「あ、阿部くん、いらっしゃい。 いつもうちの廉にありがとね。」

にこにこと言うお母さんの言葉にオレは顔が熱くなった。
何となく後ろめたい気分。
横目で阿部くんを見たら流石の阿部くんも少し、赤面していた。

「ごめんね廉、お母さんすぐ戻らなきゃならなくて」
「え・・・・・・? そうなの・・・・・・・?」
「そう、ちょっと必要なものがあって一回帰ってきただけなの。」
「あ・・・・・そう・・・・・」

安堵のため息が出そうになって慌てて我慢した。
お母さんは慌しくなんやかんや言いながらすぐにまた忙しなく出て行った。
結局10分もいなかった。

「「はー・・・・・・・・・・・・」」

お母さんが出て行くやいなや2人して盛大に息をついて、ぐったりしてしまった。
オレは熱も大分引いちゃった。

「・・・・続き、する・・・・・?」

しないよね、 と思いながら聞いたオレに阿部くんは元気良く断言した。

「する!!!」
「・・・え・・・・・・・」
「おまえもうダメ?」

・・・・・ダメってことは、ない、けど。

「ダイジョブ、オレがすぐその気にさせてやるから!!」

・・・・阿部くん、元気だね・・・・・・・・・・・・

なんて思っているうちにまた炬燵に引き摺り込まれて本当にまた
あっというまにその気にさせられてしまった。
下地はできていたからソッコーだった。
阿部くんが今度こそゴムを付けている間、やっとできるなぁと思ったら。
ぞくぞくと、体が疼いた。
早く、 欲しい。
阿部くんの熱が横向きに寝ているオレの後ろにそっとあてがわれて、
体が震えた。    期待で。

「挿れるぜ?」
「・・・・ん・・・・」

早く・・・・・・・・・・・・・             
と願った途端。

ピンポーン

「うっっ」

また誰か来た・・・・・・・・

阿部くんが 「勘弁してくれ・・・・」 と忌々しげにつぶやいた。
続いて玄関のほうから聞こえた声は。

「れーん」

修ちゃんだった。

「叶だな・・・・・・・・・・・」
「・・・うん・・・・・・・」
「今度は無視しようぜ?」
「う、 ん・・・・・・」

ごめんなさい、修ちゃん。   と内心で手を合わせた。
でも今出られない。  というか出たく、ない。 
オレもう限界、 なんだ。   (多分阿部くんはもっと限界。)
2人して再び息を潜ませながら、でも次にオレは大変なことに気が付いた。

「あ!!!!」
「なに?」
「・・・・・どうしよう・・・・・・・・・・」
「だから何だよ!??」
「オレ、さっき鍵しめてない・・・・・・・・」
「バ・・・・・・・
バカ!!!!
「そ、そんなこと、 言ったって」
「あいつ、ぜってー勝手に入ってくるぜ?!」
「オ、オレも、 そんな気が・・・・・・・・」
「いっそ見せ付けてやろっか。」
「えぇ?!!  い、嫌だよ・・・・・・!!」
「冗談だよバカ!!」

また大慌てで服を着るオレたち。

「れーん、大丈夫かぁ?」

あぁ修ちゃん、大丈夫じゃないよ全然。
お願いだからまだ入って来ないで・・・・・・・・・・・・・・・

オレと阿部くんはまた必死こいて服を整えながら、顔を見合わせた。
そしてどちらからともなく深ーい、ため息をついた。



・・・・・・・・・ダメだこりゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・












                                         運勢最悪 了 
オマケ)その後

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                                                      ダメだね。