その笑顔のためならば (中編)(SIDE A)





オレの言葉に、三橋はまずぽかんと口を開けた。 
そのままの状態でこちっと固まった。  まさに正しく 「硬直」 という感じだ。
しばらくしたらみるみる真っ赤になった。
と思ったら次に青ざめた。

何で青くなんだよ!! とムっとしたけど、とにかく体にわからせたい。
本音を言えばオレだってあまりやりたくはない。
痛そうだもん。
でも前から気になっていたことではあるんだ。
三橋が自分のことを女じゃないから、という理由で引け目を感じているのは
何となくわかっていた。
オレにはそういう発想はない。
確かに女は脅威だけど、引け目はない。 断じてない。
同じ男どうしなのに三橋だけが引け目を感じるのは理に適っていない。

てのはまぁ性格もあるだろうけど、もう1つ、体の上での役割が大きいような気がする。
三橋が女役をやってくれてるから。
だからそういう卑屈なこと考えちゃうんだきっと。
オレは確かに最初から抱く側が良かったし、そう言ったけど。
でもそれでオレがどんだけ感謝しているか、こいつ全然わかってない。
三橋が理屈じゃない部分でオレのことを自分のだと思えるなら何だってする。
それで少しでも変われるなら、痛かろうが恥ずかしかろうがそんなのは瑣末なことだ。

よし!!  とオレは改めて拳を握り締めた。
青い顔の三橋に再度きっぱりと告げる。

「今日はおまえがオレにしろ!!!」
「・・・・・うぇ・・・・」

うぇ??!!!

「なんだよそのリアクション・・・・・・・・・・・・」
「え、 や、 あの」
「イヤなのかよ・・・・・?」

言いながら自分の顔が険悪になるのがわかってしまった。 まずい。
案の定三橋はさらに青くなった。
無理矢理笑顔を作ってみたら今度は 「ひぃ」 と小さな悲鳴をあげた。  ますますまずい。
怖がらせてどーするオレ!!!!

気を静めて、 ごほん! と咳払いをしてから仕切り直しを図る。

「そんな難しく考えなくていいからさ」
「・・・え・・・・」
「大体おまえだって男なんだから、たまには入れたい時もあんじゃね?」

オレの言葉に三橋は考えるような顔になった。 
しめしめ、  と内心でほくそえんだ。
男ならないワケないだろいくら何でも。

「男なのにその経験なしに人生終わるんじゃ、オレだって後ろめたいしさ」

実はこれは本音だったりする。  実際わりーなとも思ってる。
オレの人生設計では三橋は一生オレといるんだから、ヘタすっと一生経験なしになっちまう。

「な? やってみろよ」
「う・・・・・・」

ようやくおずおずと頷いたのを見てホっとすると同時に少し緊張した。
だって痛そうだもん。 けど。
興味あるのも事実だ。 三橋があんだけ良さそうなんだから意外と気持ちいいかもしんない。
そう思ったらちょっとわくわくした。

「じゃあやれ!」
「え」

またもや三橋の顔が引き攣った。
やれと言われて はいそうですか、とできる性格じゃねーか。
仕方ねーな・・・・・・・・・・・・・・・・

待ってるだけじゃ全然先に進みそうにないと判断したオレはさっさと服を脱いだ。
三橋の表情を見る限りいわゆる 「ゼンギ」 だのは期待しても無駄だと早々に諦めた。 
でも別にそのテのことは普段でもお互いにしてるから、この際どうでもいい。
肝心なのは本番だ。
オレが脱いでも、三橋は引き攣った顔のまま座り込んでいる。

「・・・・・脱がねーの?」

イライラしかけてから、そうか、と気付いた。
いっつもオレが脱がせているから習慣がついてないんだ。
なので黙って三橋の服に手をかけて、慣れた要領でさくさくと脱がせてしまった。
何だかいつもと同じ展開のような気がするけど、とにかく入れさせちゃえばこっちのもん。

いささか乱暴なことを考える。
ふと三橋の顔を見ると。
真っ赤になって目を潤ませて心なしかぷるぷると震えている。 それを見ただけでオレは。

勃っちゃった。
なんて簡単なオレ。
とにかく2人とも脱いだし。

「じゃあやって?」

言いながらやりやすいように座ったまま膝を立てて足を広げてやった。
やっぱりこれは (想像はしていたけど) 相当気色ワルイ。 それに落ち着かない。
三橋の気持ちがわかったような気分になる。

三橋の顔をじーっと見ていると、ちらちらとオレの顔を見ては
また明後日の方向に視線を彷徨わせる。
オレが見てるとやりにくいのかな。
そう気付いて目を瞑って待った。  なのに。
待てど暮らせど何も起きない。   待ちくたびれて目を開けたら。
三橋は果てしなく困ったような顔で俯いて、依然としてぷるぷるしていやがった。
イラーーーー  と湧き上がってくるモンを必死で抑え込む。

「何でやんねーんだよ?!」
「え、  あの」
「オレがいつもしてるようにすりゃいんだよ!」
「う、 それは、わか、るんだ、けど」
「できねーのかよ?」

それはそれで傷つくんだけど。

と思ったオレの顔色を読んだのか、三橋は慌てた顔になった。

「や、やり、マス・・・・・・」

蚊の鳴くような声でやっと言った。  さっさとしろ!!!
そう思ったところで、いきなり何もつけないで指を入れようとしてきたんで。

「待った」
「へっ」

びくりと揺れて素早く指が引っ込んだ。

「乾いたまま入れたら痛いだろーが!!」
「あ、 そ、そう、だよね・・・・・・」

オレは黙って立って机からローションを出して渡してやった。
三橋がおずおずと受け取って指にたっぷり付けるのを確認してから
またやりやすいように体勢を作ってやったら。

「し、失礼、します・・・・・」

今度こそ、指が入ってきた、はいいんだけど。

気持ち悪い。

「きもち、 いい・・・・・?」
「全然」

憮然として言ったら三橋が 「ひ」 とまた青くなった。  しまった正直に言い過ぎた。

「・・・・あー、気にしなくていいから」

フォローしてやりながらも気持ち悪いもんはどうしようもない。
気を付けてないと盛大に眉間にしわが寄ってくる。
意識して普通の顔を心がけながら、もうどんどん先に進んでほしい気持ちが湧き上げる。
オレの気分とは裏腹に指はもじもじしてなかなか奥に進まない。
我慢して待っていると少し深く入ってきて、よし、と思うものの
どうにもこうにもキモチワルイこと夥しい。
三橋が「ヨク」なるタイミングを思い出すと、もしかしてもっと奥なんじゃねーかな、という気が。

「あのさ、も少し中まで入れてみてくんない?」
「う?」
「おまえだって自分のイイとこ知ってんだろが!」
「あ、 う、うん」
「だからさ、その辺りを探してよ」
「う、うん」

何だか三橋の顔が必死、て感じになってきた。
とてもエッチって雰囲気じゃない。  まるで何かの実験かなんかやってるみてぇ。
いいやもうとにかく最終的に入れさせちゃえば。

思いながら気持ち悪さに耐える。
三橋の指がまたおそるおそる、さらに奥まで入るのがわかった。
それから一生懸命 「その辺」 を探そうとうろうろしているのもわかったんだけど。

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あの」
「うん」
「こ、この辺じゃないか、な、 と思う、 んだけど」

オレもそう思うんだけど。

「ど、どう・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

正直に答えていいものか、とオレは困ってしまった。
ひたすら気持ち悪いだけ。  快感のカケラもない。
何で?   三橋は最初からそれなりに感じてたっぽいのに。
何でオレはこんなに全然ダメなんだろう。
三橋のやり方がマズいってわけでもないような。
そりゃ慣れてはないけど、ローションはたっぷりつけてたから痛みはねーし。

うーんと考えて、はたと思い出したことがあった。
男でも前立腺が通っている位置によって、入れられて感じるヤツとダメなヤツがいるとか何とか
どこかで聞いたことがあるような。
どっちが何割とかまでは忘れたけど。
もしかしてオレ、感じないほう・・・・・・?
ということは三橋が感じるほうだったのは、ひょっとしてものすごくラッキーだったんじゃ。

そんな今さらなことに思い至って、何やら胸を撫で下ろしたい心境になったりしてたら。

「あべ・・・・くん」

三橋の声に我に返った。 何だか今にも泣きそうな声なんですケド。

「き、気持ちよく、ない・・・・・・・・・・?」
「えーと、あのさ」

オレはその時点で諦めた。
今日はもう痛い思いをすることを覚悟する。
一番最初の時三橋にも思い切り痛くしたんだからこれでおあいこだ。
三橋の気持ちよさを体感できないのは残念だけどこればかりは仕方ない。

「もう慣らすのはいいからさ、」
「え」
「入れちゃっていいよ」

三橋はとまどったような顔になったものの、指を抜いた。 ホっとする。
あぁでもこれから痛いことになるわけだな・・・・・・・・

少々緊張気味に思ってから 「あ」 と 重 大 な ことに気付いた。
三橋の足の間を凝視する。
三橋もオレの視線に気付いて 「しまった」 という顔で自分のそれを見下ろした。
2人して無言でじぃっとそこを見つめてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・すごく傷ついた、 かも。

「・・・・・何で勃ってねーんだよ・・・・・・・?」
「う」
「う、 じゃねーよ!」
「え、だだ、だって・・・・・」
「だって、なんだよ?!」
「・・・・・阿部くん、顔、 こわい・・・・・・・・」

・・・・・・・・あーそうですか。

「・・・・・・・わかった」
「え、 あっ」

オレは黙って三橋のふにゃっとしたそれを掴んでいつものように扱いてやった。

「あ、  あ」

身を捩って喘ぐ三橋を見ながらため息をつきたくなった。
これじゃあいつもとほとんど変わんねーし・・・・・・・・・・・・・・・・・

てか入れたい。

ダメダメ。 今日は入れさせるんだ!!

また自分に言い聞かせる。
オレが気持ちヨくなるのはもう絶望的だけど、三橋の心境を少しでも変えるため。
まもなく三橋の準備もできたのを見てゴムを渡してやった。

「えーと・・・・・・・」

今度はもたくさもたくさしてゴム1枚ダメにしそうな感じ。
がくり、 とオレは内心でうなだれた。
でもこれも考えてみれば当たり前だ。 三橋はしたことない。
いきなり上手く付けられるわけがない。  代わりにまたオレが被せてやる。

「・・・・ふ・・・・・」

また切なげに喘ぎやがった。
くそ!!! オレのこと試してんのかこいつはよ!!
入れてぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・

頭を振って攻撃的な気分を追い払った。 
痛そうだから(オレが) 三橋のほうにもローションを垂らした。

「あ・・・・・・・」

喘   ぐ   な!!
と心の中だけで怒鳴りながら多目に使った。
これで少しはマシだろう、うん。  さてと。

「よしじゃあやれ!」
「う」

三橋の顔が一気に緊張した。 















                                        中編 了(後編 SIDE Aへ)

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