ジュヨウとキョウキュウ





「オレ頑張って練習しようと思うんだ」

阿部くんがそう言ったとき何のことを言っているのかよくわからなかった。
というか野球の何か、新しい技(??)かなんかのことかなと一瞬思った。
だから続けて阿部くんが

「だからおまえも協力してくれよな!!」

と言った時はウキウキした気分で頷いた。
そしてその日の帰りに 「今日さっそくすっからうち来て」 と言われた時も
「もっと野球できる・・・・・・・」 と嬉しく思いながら
いそいそと付いて行った。

なので誰もいないらしい阿部くんちに着いて部屋に入るなり
ベッドに押し倒された時はすごく慌ててしまった。

「あ、阿部くん・・・・・??!」
「なに?」
「れ、練習は・・・・・・・?」
「だからすんの。」

嫌な予感が。

「や、野球の・・・・・・・・」
「ちげーよ。 エッチの練習」

ややややっぱり・・・・・・・・・・で、でも。

「練習なんかしなくても・・・・・・・」 もうできるんじゃ。
「オレ、長くもたせたいし」
「えっ」  いやオレは別に。
「そんでおまえに満足してほしいし」
「えっ」  いやもう充分満足できるし。

ていうかオレはそんなもたないから阿部くんに頑張られるとちょっとタイヘン・・・・・・

と言おうとしたけど言えなかった。
言おうと思って口を開いたところで塞がれたからだ。
だから後で言おうと思ったんだけど、
阿部くんがキスをしながら忙しなく体のほうにもあれこれするもんだから、言えない状態になってきた。
口が離れてから言わなきゃと思っても言葉の代わりに変な声が出そうでもう全然ダメ。


そうこうしているうちに気が付いたら服を全部脱がされてて
阿部くんの指がオレの中にしっかりと入り込んでいた。
阿部くんは熱心に中で指を動かしている。 おまけに。

「ここどう? 気持ちイイ?」

なんて聞いてくる。 オレは答えるどころじゃない。
口を開けたくない。 開けたら最後変な声が。
貝みたいに口をきっちり閉じながらちらっと一瞬目を開けたら、
阿部くんは指を動かしながら じぃっとオレの顔を見ていた。

あぁもう・・・・・・・・・・・・・・・

「ふぅん・・・・・・・」

な、何が「ふぅん」なんだろう。 聞きたいけど聞くのが怖い。
というか、知らないほうがシアワセかもしれない。

阿部くんは時々 「ふーん」 と言いながらオレの中をさんざん嬲った。
だもんでオレはとうとう涙がぼろぼろ出てきて止まらなくなってしまった。

泣き出したら阿部くんは少し慌てた顔をして
「もう挿れていい?」 と聞いてくれたんで必死で頷いた。

指が出ていってホっとしてぼーっと呆けていたら
阿部くんはさくさく準備してから慎重に入ってきて。
最初の圧迫感と僅かな痛みをやり過ごして安堵したのもつかのま、
入れたまま阿部くんはオレの体をまたあちこち触り始めた。

あ、 それやめて・・・・・・・・・・・・・

とオレが思ったのと阿部くんが 「あ」 とつぶやいたのが同時だった。
つぶやいてから阿部くんはオレの顔を見てまた 「ふーん」 と言った。
だから何が 「ふーん」 なんだろ・・・・・・・・・・・

なんて思う間もなくまた胸をぎゅっと摘まれて危うく声が出そうになって急いで抑えた。
今度は 「あ、ヤベ」 という声が聞こえて、阿部くんの手が止まった。

少しの間 じぃっとどこも動かないでいて、それから 「なるほど・・・・・」 と
阿部くんがつぶやいた。
何が 「なるほど」????
阿部くんが動かないとオレもちょっと余裕ができて何か考えたりすることができる、んだけど
またすぐに動かれてあまりいろいろ考えられなくなった。

「あっ・・・・・・・」

奥の方を小刻みに突かれて我慢できなくて声が出ちゃった。

「ふーん・・・・・」

阿部くんがまた言った。
だからそれやめてほしい・・・・・・・・・・・・気になる、から。

とか思っても言えない。 変な動き方をされて、ぎょっとして、反射的に体が逃げそうになった。
何でかというと強烈に気持ち良くて。
こんなに気持ちいいと何だかあれこれどうでもよくなってしまって
そういう自分が少し、怖くなる、 からあまり気持ち良過ぎるのは困る・・・・・・・・・
でも頑張って我慢した。 どうせ逃げても無駄なんだし。 (ということはもうよくわかってる。)

あっというまにイきそうになってきて阿部くんも動いてくれてるし
やっと出せるなぁと霞む頭でぼんやり思ったところで、
ぴたりと、動きが止まった。
だけでなく根元を ぎゅうっと握られた。

「ふぁっ??!」

違う種類の妙な声が出た。 ひ、ひどい阿部くん・・・・・・・・・・

「まだ出しちゃダメ」
 
え、でもオレもう我慢できな・・・・・・・・

「もうちょっといろいろ学習すっから」

・・・・・・・しないでお願い・・・・・・・

「だっておまえ、イっちゃったらオレが中にいるとしんどいんじゃね?」

それはそうだけど・・・・・・・・・・
でもオレ今すでにしんどい・・・・・・・・・

とか思って文句を言いたくても言えない。
結局口もきけないでいるオレに阿部くんはいろいろなことを試した。
オレはそのたびに声を抑えるのが大変で。
そのたびに阿部くんは 「ふーん」 だの 「なるほど」 だの 「あ、これヤバい」 だの
「あぁそうか」 だのつぶやいていて気になってたまらないんだけど、
でももう最後のほうはそれを気にする余裕すらなくなった。

やっと阿部くんがちゃんと動いてくれて達することができた時、
オレは本当に嬉しかった。
阿部くんが出ていった後もまだ入っているような感覚が消えない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ疲れた・・・・・・・・・・・・・・・・・


しゃべる元気もなくぐったりしているオレの体を丁寧に拭いてくれながら
阿部くんはやけににこにこしていた。

「オレ、いろいろわかったよ」

・・・・・そう・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今度からもっと上手くなるから!!」

いやもう充分デス・・・・・・・・

「もっと長くできるようにも」
「えぇ?!」

思わず抗議の声が出てしまった。

「長く、しないで・・・・・・・・・・」
「何で?」
「・・・・・・・オレ短くていい・・・・・・・」
「だって気持ちイイ時間はたくさんあるほうがいいじゃん」

げ、限度ってものが・・・・・・・・・・・・

にこにこと嬉しそうな阿部くんにオレは最後の気力を振り絞って
最初から言いたくて堪らなかったことをやっと、言った。


「阿部くん、 お願いだから、 あんまり、・・・・・・・・頑張らないで・・・・・・・・・・・・・・」













                                     ジュヨウとキョウキュウ  了(オマケ

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                                   三橋は「声を我慢しなければ早く終わる」という法則に気付いていない。