ハッピーエンドの先の先 -3 (サイドM)





熱い息が耳にかかって ぶるっと、 体が震えた。

「欲しくて堪らない・・・・・・・・・・・・」

言いながら手のほうは、そこを揉むように動いた。

「う、  あ、 や・・・・やだ・・・・・・・・・」

出てきたのは拒絶の言葉だったけど。
我ながら力がなくて、まるで本当に誘っているみたい。

どこかでちらりとそう思った。 だって気持ちいいのは間違いなくて。
でもやっぱり怖い。
するのも怖いけど阿部くんの目が。

今まで見たことのない目をしている。 それが怖くてたまらない。
それに阿部くんの体がものすごく熱い。  これ絶対熱がかなり高い。
そんな時にこんなことして、大丈夫なんだろうか。
とりあえずそれだけでも聞きたい。

と、思うのに口がきけない。 阿部くんの手のせいだ。
手はオレのあそこを執拗に探っていて、みるみる張り詰めてくる、
のがよくわかるんだけどどうすることもできなくて。
せめてまず手をどけて欲しくて、必死で身を捩った。
手から逃れるように、うつ伏せになってみた。

ようやく手が離れて、ホっと息をついた。 途端に襟の後ろを掴まれた。
あっと思った時は引っ張られて、ボタンが全部外されていたシャツは
あっけなく取り去られてしまった。
焦る間もなく今度は背中をすーっと舐められた。
同時に両手首もしっかりと阿部くんの手に掴まれていて。

「ん    ふぁ」

また変な声が出た。
頭が霞んでくる。
背中に覆い被さっている阿部くんの腰がオレの太腿の辺りに当たって。
他のどこよりも熱いそれをはっきりと感じてさらに体温が上がった。

逃げられない。

そう悟ったら体から力が抜けた。
抜くといっそう快感が強くなった。
舌はしつこく背中を這い回って、出そうになる声を抑えるだけで精一杯だ。
阿部くんの手が体にかかって仰向けに戻された時も、もうされるがままだった。
でも続いて、阿部くんの手がオレのズボンのベルトにかかるのに気付いた瞬間。

唐突に理屈じゃない恐怖を、  また感じた。


「え、 あ、 や・・・・・・・・」

本気で抵抗しようとしたのに。
強い力で押さえ付けられてて、まともな抵抗になってない。
阿部くんは左手でオレの右手をシーツに押し付けながら、片手だけで器用にベルトを外していく。
もがいてみても無駄で、間もなくジッパーの下りる音が聞こえた。
思わずきつく目を瞑って顔をそむけた。
すぐにオレのモノが外に出されたのが、 わかった。
阿部くんの手が少し止まって、そこを阿部くんが凝視しているのが何となくわかってしまう。

恥ずかしくて死にそう。

いきなりの急展開に気持ちがついていけない。
怖くて恥ずかしくてもうどうすればいいのかわからない。
それなのに。

「あ、  あぁっ」

下着とズボンを無理矢理太腿までずり下げられたと思ったら
阿部くんの指がオレ自身に絡まった。
背中がのけぞるくらい感じた。
指はそろそろと特に敏感なところを刺激してきて、
すごい勢いで快感が押し寄せてきて、体中の力がまたもや抜けてしまった。

「あ、  いや、 あ」

せめてもと抗議しても手を止めてくれる気配がない。
なす術もなくどんどん煽られながら、強い視線を感じる。
薄目を開けてこっそりと窺うと、阿部くんは予想どおりじっとオレの顔を見ていた。
その目が何だかやっぱりいつもと違う。

「ふ、  ん、  あっ」

今まで出したこともないような変な声が勝手に溢れ出てくる。
自分ですることだってもちろんあるのに。
全然違うのはきっとそれが阿部くんの手だから。
しょっちゅう見る機会のある阿部くんの手。
オレの球を受けてくれる、そしてオレに投げ返してくれる大好きな手。
それが今は、オレのあそこを。

そう思っただけで体中に痺れるような鋭い感覚が走った。
このまま阿部くんの手で、イかされたい、とどこかで望んでいる自分に気付いた。
気付いてびっくりしたところで手が離れた。

目を開けたら今度は阿部くんの顔が見えない。
下のほうに移動したんだ、とわかったのと
中心が手とは違う熱くて柔らかいものに包まれたのが同時だった。

「あぁっっ」

くらくらするような快感といっしょに瞬間 「悪い」 という気持ちが湧いて。
必死で口を開いた。

「あ、 阿部、 くん!!」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「や、 やめ、 て・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ふ、   あ」

言葉はすぐに出なくなってしまった。
気持ち良過ぎて目の奥がちかちかした。
阿部くんはまるでやめてくれそうにない。
手は腰にしっかりと回っていてびくともしないし。
熱い舌が生き物のように動いて正確に 「イイ」 ところを刺激してくる。
気持ちイイのと恥ずかしいのと悪いと思う気持ちと怖いのとでもう頭ん中はぐちゃぐちゃで。

まさかこんなことになるなんて。
オレ、お見舞いに来たつもりなのになんでこんな。
オレだっていつかは阿部くんと こういうこと、するのかな、とはちょっとは思っていたけど。
こんな突然されるなんて。

焦りながら、でも諦めの心境になってきた。
考えたらお互いに出すだけだし。
阿部くんにする自信ないけど、別に嫌じゃないし。
どっちにしろ気持ち良くて抵抗なんてもう無理だ。
息が上がってるせいで、忙しない呼吸音を自分の口が立てているのが
恥ずかしくて堪らないのに、それすら止められない。

でも。

ようやく阿部くんの口が離れて少しホっとして、
息を整えているうちにまた上に戻ってきた阿部くんの目を見て。
ふつふつと、何度目かの恐怖がまた湧いた。
どうしてこんなにいつもと違って見えるんだろう。
いつもと違うことをしてるせいかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「三橋」
「ん・・・・・・・・」
「していい・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「したい・・・・・・・・」

怖いんだけど。
いつもと違う目でいつもと違う声で囁かれて、それだけでますます体が熱くなった。
もう、 いいやと思った。
予想もしてなかったから、驚いたけど。  オレだって阿部くんが好きだし。
それにもう出さないと収まりそうもない。
阿部くんだってそうだと思う。
阿部くんのはオレがするのか、 と思うと緊張するけど、でも頑張ってみよう。

覚悟を決めて頷いた。
阿部くんは嬉しそうな顔をした。 それを見て、ワケもなくホっとした。
すぐに、中途半端に下ろされていたズボンと下着に手がかかった。
やっぱり全部脱がないとダメなのかなぁと思いながら、大人しく脱がされた。
続いて阿部くんの手がオレの膝にかかった、
と思ったらぐいっと広げられた。
え?  と不思議に思っているうちに指が。
後ろのほうに。

「えっ・・・・・・・・・・?!!」

自分でも触らないようなところで阿部くんの指が止まった。
生理的な嫌悪感で体が竦んだ。

何でそんなところを?!

「あ、あべくん?!」
「なに?」
「な、なにして・・・・・・・・・・・」
「だって入れる前にほぐさねーと」


いれる?    いれるって。


なにを。


どこに。









突然、   気付いた。

同時にざっと血の気が引くのが、 自分で    わかった。















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