ハッピーエンドの先の先 -2 (サイドM)





その時阿部くんは急に汗をかきはじめた。
さっきから顔とか赤かったから、多分熱のせいで熱いんだろうなとは思っていたけど。
それにしてもいきなり額から汗が噴き出して、それだけならまだしも
目が少し空ろになったような気がして、すごく心配になった。
いても立ってもいられない気分になって、タオルを探して持ってきた。

まずは額を拭きながら首とかに目をやるととにかく全部赤くて
全身から汗が出てるような。
拭いてから乾いた服に着替えたほうがいいような気がする。
そう思って体を拭くことを提案してみた。
看病に来たんだから役に立ちたいし。
それに心配だし、何かしたい。
阿部くんが嬉しそうな顔をしてくれたのでホっとした。
言われるままに苦労してジャージの上を脱がせた。

でも胸を拭いている途中で頭に衝撃を感じた。
びっくりしたのと痛みで頭を抱えながら、阿部くんの慌てたような声に何とか答えたところで
腕を掴まれた。 すごい力だった。
え? と思った時はもう阿部くんの顔が目の前にあって、
次の瞬間今度は口に衝撃を感じた。

「いたっ・・・・・・・」

咄嗟に口を押さえた。
何が起こったのかよくわからない。 わかったのは。
歯に勢いよく何かがぶつかった。
そろりと目を開けると、阿部くんも口を押さえながら呆然とオレを見ていた。

「・・・・・くそっ!!!」

忌々しげな声がして、何が何だかわからないでいるうちに口を押さえている手を外された。
と思ったら、阿部くんの顔がすーっと寄ってきてまた口になにか。
今度は痛みはなくて唇に柔らかい感触が。
それに至近距離に阿部くんの顔が。 というか目が。
近過ぎて焦点が合わない、んだけど、気付けば阿部くんと睨めっこしてた。

呆けていると口に当たっているものが離れた。

「・・・・・目ぇ閉じろよ三橋」

言われて我に返った。 反射的に目を閉じたらまた柔らかい感触。

これってもしかして。

・・・・・キスしてるんじゃ・・・・・・・・・・・・・・・・

ようやく気付いた。
わかった途端にびっくりして思わず胸を押したらまた離れた。
目を開けたら阿部くんの傷ついたような顔が目の前にあった。

「・・・・・いやか?」
「え」

そこでまた気が付いた。
いやじゃない。
初めてだったから驚いただけで、全然イヤじゃない。

「ヤ、じゃない、よ・・・・・」

恥ずかしくて俯いて言ったらぐいっと顔を持ち上げられて、慌てる暇もなくまたされた。
熱くて柔らかい感触にうっとりしていたら湿ったものが口の中に。

「!!!」

またびっくりしたけど。
やっぱりイヤじゃなかった。
それどころか気持ち、いい。
しばらくして阿部くんが離れた後もぼーっと目を瞑ってたら囁き声がした。

「オレずっとキスしたかったんだ」

そうなの・・・・・・・・?

「ずーっとしたくてしたくて堪らなかった」

・・・・・知らなかった・・・・・・・・・・・

「だから、嬉しい」

また、された。 また舌が入ってきて、気持ちよくて幸せで。
夢中になって阿部くんの腕にしがみついた。 途端に。
口が離れて腕を引っ張られて え? と慌てた。
続いて強い力で腰のあたりも引っ張られて、視界がぐるりと反転して、
一度開けた目をまたぎゅっと瞑った。
次に開けた時はベッドの上で仰向けに寝てて、おまけにそんなオレを阿部くんが見下ろしていた。
その阿部くんの顔を見て。
少し焦った。
何だかいつもと違う。  目が。  変だ。 
どう変なのかよくわからないけど変だ。

急に怖くなった。

なので逃げようとした。
でもそれは叶わなかった。
阿部くんがオレの腕を押さえ付けながら覆いかぶさってきたからだ。

すぐにまた口を塞がれた。
怖いんだけど。 やっぱり気持ち良くて。
抵抗もできずに舌を受け入れていたら、ボタンがぷちぷちと外され始めた。
えっ  と密かに焦っているうちにあっというまに全部外されて
胸にひんやりとした空気が当たって、次に熱い感触にすーっと脇腹を撫でられた。

「んっ・・・・・・・」

鼻から抜けるような声が勝手に出た。
何か言いたくても口はしっかりと塞がれているし。
熱い感触は胸に移動してそろそろと撫でたかと思うと、乳首をきゅうっと摘んだ。

「ん!!!」

ぞくぞくと背筋を這い昇ってくる変な感覚がして思わず身を捩ったら、やっと口が解放された。
はーっと息をつきかけたところで一瞬息が止まった。
阿部くんの唇がオレの乳首を強く吸ったからだ。
ぞくりと 肌が粟立った。
けどまた怖くなった。  逃げたい。
でももがいてみても圧し掛かられていて全然動けない。
焦っている間にも阿部くんの舌はオレの乳首を舐めて、転がして、また吸った。

「あ、  あ、」

下半身にじん、と熱が集まるのがわかる。
そんなことされたの生まれて初めてで、胸なんて自分でも触らないのに。
信じられないくらい 気持ち、いい。  でも。

「や、  いや・・・・・・・・・」

涙声みたいになってしまった。 
胸から口が離れた。
濡れたそこがすっと寒くなった。
目を開けたら、阿部くんがじっとオレを見下ろしていた。

「だっておまえ、誘った。」
「えっ・・・・・・・・」 

びっくりした。
そんな、 こと、 してない・・・・・・・・・・。

「本当に、いや?」
「・・・・・・・・・・・。」

問われて改めて考えてみる、とイヤじゃない、と思う。  それは確かなんだけど。
でも怖い。

阿部くんの目を見ながら回らない頭で必死で考える。

オレ、キスしたのだって今日が初めてで。
こんないきなり。 
これってつまりその、 エ、エッチ、 だよね・・・・・・・・・・・・・
ま、前したいって言ってたし。 言ったというか叫ばれた、し。
その時も実は思ったんだけど。
男どうしってどうやって。  女の子と違っていれるトコないし。
出しっこするのかな?
オレ、人のなんてしたことない。
それにそんな恥ずかしいことする自信な・・・・・・・・・・・・

ぐるぐると考えているとダイレクトな快感が全身を貫いた。

「あっ」

阿部くんの手がオレの中心を服の上からさわりと、撫でたからだ。
思わずまた目を瞑った。 考えていたことが全部消えてしまった。


「オレ、おまえが欲しい」


耳元で囁かれた。













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