チャレンジその3-3





ずっとそうしていたかったけどそういうわけにもいかないんで、
頭がはっきりしてきたところで、腕を緩めて改めて三橋の顔を見た。
目を瞑っている。 まだ僅かに息が荒い。
目じりに涙が少し滲んでいるのが見えてぺろりと舐めた。

それからよいしょと身を起こしてそろそろと慎重に三橋の中から出た。
抜いた瞬間その体が びくりと 震えるのがわかった。 
(??  何で??)

「・・・もしかして今感じた・・・・・・・?」

思わず聞いたら三橋はぱちっと目を開けて (まだ泣いてる・・・・) ふるふると顔を横に振った。 

(本当かな・・・・・・・・)

疑いながら じいっと顔を見たらまたパタリと目を閉じちゃった。
これやっぱり照れてるのかな。 わかんないな。
また涙を舐めてやった。 大人しく舐められているのは多分相当脱力してるんだと思う。 
放心しているみたいな感じ。

なので一回とりあえず離れて自分のからゴムを外してこぼれないように
ティッシュにくるんで、とか1人でごそごそやってたら
ぼーっと寝ていた三橋がいきなり がばりと起き上がった。
と思ったら慌てた様子でやにわに自分の腹とか拭き始めた。 
(あ、こいつ)
いつかの思い出したんだきっと。 また拭いてやろうと思ってたのに。 つまんねぇの。
思惑が外れて物足りない気分でじっと見てたら、ちらっとこっちを見たんで目が合った。
何となく顔を見合わせて2人して意味もなく えへへへ とか笑っちゃう。
やっぱ照れくさいな・・・・・・・・・・

どうせまた着たがるんだろうと思って下着とズボンを探して渡してやった。

「・・・ありがと・・・・・・」

どーいたしまして。 上は取ってやんないけどな。
なんかオレもだけど顔を見ると三橋もまだ結構ぼーっとしてんな。
今なに考えてんのかな・・・・・・・・・

けどオレは実はさっきから確認したくて堪らないことがある。

いっしょに布団にもぐりこんで落ち着いてから早速聞いてみた。

「気持ち良かった?」

真っ赤になった。 やっぱりな。

「・・・・・うん。」

あぁ良かった・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・ホントに、良かった・・・・・・・・・。
でも何かもうちょっとな。 長くできるように次は頑張ろ・・・・・・・・・
そんなことをぼんやり考えてたら小さな小さな声が聞こえた。

「阿部・・・くんは・・・・・・」 
「は?」
「・・・・・・・かった・・・・・?」
「?なに? もっかい言って。」
「・・・・・気持ち・・・・良かった・・・・・・?」

良かったに決まってんじゃん。 てか 良 過 ぎ た。  ヤバいくらい。

「良かったよ。 すっげぇ。」

その瞬間三橋の顔が。
すごく嬉しそう・・・というよりむしろホッとしたような感じになって、
「・・・・ならよかった・・・・・・・」
とまた小さな声 (つぶやきに近い) が聞こえた。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)
あぁもう。
こ  い  つ  は  ま  っ  た  く。
オレの今の気持ちを伝えてやりたい。 でも上手く言葉にできそうもなかったんで
(できても歯の浮くようなセリフになりそうでダメ) 

「良すぎてあんまもたなかった。 ごめんな。」

なんて言ってみた。 本当のことだし。 かっこわりーけど。
三橋は心底驚いたような顔をして、それからまたみるみる赤くなった。

あ、そうだ。 これも確認しとかないと   とそこで大事なことを思い出す。

「今痛い?」
「・・・・へ?」
「ここ」   
言いながら三橋の尻を撫でる。 びくっと揺れた。 
こいつなかなか慣れねぇな・・・・・・・・・。

「・・・・・平気・・・・・」

怪しい・・・・・・・・

「全然痛くない?」
「・・・・ちょっとひりひりする・・・・けど大丈夫・・・・・」

ひりひり。 ・・・・そうだろうな・・・・・・・・・。
こないだに比べればずっとマシだったと思うけど。
元々そういう場所じゃねえんだから完全に痛くなくなることなんてないのかもな。
慣れてくるとローションとかなしでも濡れる、って本当なのかな。
それくらいになったらもうひりひりもしなくなんのかな。

あれこれ考えながら
オレがまた何となーく罪悪感に満ち満ちていたら寝息が聞こえてきた。
え? と思って隣を見たら三橋はもう眠っていた。
ちょっと呆けてしまった。

もう寝ちゃったの?
まだおやすみも言ってねぇのに??

最初の時も思ったけど。
こいつ終わると寝るのはえーよな・・・・・・・・。
何だかさ。 よく女の子が 「終わると彼ってばすぐ寝ちゃう」 とか何とかで
落ち込んだりする (らしい) けどこれって逆じゃん。
や、三橋は女の子じゃねえけど。
出すと即行眠くなるのはオレもよーくわかるから別にいいんだけど。
やっぱ疲れたのかな。   満ち足りた顔しちゃってさ。

(・・・・・まぁいいか)


でもオレは逆に少し目が冴えちゃっていた。
何でかというと。
さっき、まさに抱いている最中に。
自分でびっくりしたことがあったから。

もう頭の中白かったし夢中だったからちゃんとした思考って感じじゃないんだけど。
ものすごく強く思った (というか感じた?) ことがあった。



『ゼッタイ ダレニモ ワタシタクナイ』



ほんの一瞬だったけど自分でもたじろぐくらいの強烈な想いだった。
理性なんてカケラもない、むき出しの感情の塊りのような。


まずい  な。
本当は。

三橋のこと抱きたかったのってもちろん好きだからやりたいというのが一番だけど
それでちょっとは落ち着けるかなと思ったんだよな。
何となく不安だったり、それから自分でもつまんないとわかっている嫉妬とか、
全部自分のものにしたら (三橋はモノじゃねぇけど。)
少しは収まるんじゃないかと、    思ったんだけど。

逆かも。   余計ひどくなりそうな気も。
あ、でも。 とりあえず安心はできたかもしれない。  ある意味、だけど。

つらつら考えているうちに、オレは自分の独占欲の強さを持て余すような気分になった。
アレ結構しんどいんだもん。
でも悩んでも仕方ない。
性格なんてそんな簡単に変えられないし。

あんまり露骨に出さないようにしねーと。
オレは別にバレてもいいけど三橋がすごくイヤがりそうだもんな。
花井と田島にはどうせバレてるからそんなに神経使わなくてもいいよなうん。
それにしてもなぁ。
気持ちを自覚してから惚れた弱みってやつがイヤってほどわかっちゃったな・・・・・・・

半分眠りに落ちながらそんなことをまたぼんやりと考えた。
でも完全に意識を手放す前にふっと、自分でもよくわからない 「何か」 を確認したくなって
目を開けて三橋の寝顔を見たら、それがとても幸せそうに見えたんで、


・・・・・・・まぁいいか。


と、また思ったんだ。














                                          チャレンジその3-3 了

                                              
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