チャレンジその2-3





「あるだろ?」

サラダ油がない家なんてないと思うから確信的に言ってやる。
三橋は黙って青ざめている。

「ちょっと持ってきてよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「あ、場所教えてくれればオレ自分で持ってくるし。」

自分でも相当むちゃくちゃ言ってんのはわかっているけど
オレはもう。 とにかく。 挿れたい。
しかも時間制限があるから、ちゃっちゃっとコトを運ばないと。

「・・・・いや・・・・・・だよ。」

小さいけど、はっきりとした声だった。 

「ダメ?」
「・・・・・・ダメ。」
「何で?」
「だって・・・・・食べ物・・・だし・・・・・・」

あー そうですか。 やっぱりダメですか。 
実はオレもサラダ油はあんまりかなとちらりと思ってたんで
いつもはハッキリとものを言わない三橋が珍しくきっぱりと断ってきたことで
とっとと諦めることにする。 
しょうがねぇ。 じゃあどうするか。 何か代用できそうなもん。
シャンプーとか? でもそんなもん使って大丈夫なんかな。
薬品の類だからかぶれたりしたらかわいそうだし。
それに三橋がかぶれるってことはオレもってことだ。  オレは後で洗えば済むけど。
三橋はそういうわけにも。  てかめちゃくちゃ洗いにくそうだ。
やっぱ薬品ぽいのはやめたほうがいいよなうん。
でもハンドクリームとかなら皮膚に塗るものだから平気かも。

「じゃあさ、ハンドクリームない?」
「・・・・・・え・・・・っと」
「うん」
「多分・・・・・・・・あるけど」
「多分?」
「どこにあるかは・・・・・知らない・・・・・」
「あ、そう・・・・・・・・」

探してる時間ねーよな。
他に何かないか。 絶対人畜無害なもの。
何かねーか何か。 (なんて考えている間にも時間が)

(そうだ!!!)

オレはまた思いついた。
なので、三橋の腰を掴んでその下にその辺にあったクッションだの何だの置こうとしたら

「ああああ阿部くん?!?!」

すごい勢いで抵抗された。

「なに」
「・・・なにを・・・する気・・・・・・・」
「腰持ち上げんの。」
「・・・・ヤ・・・・ヤダ・・・・・・」
「恥ずかしい?」
「・・・・う・・・・・・・」
「じゃ目ぇ瞑っててやるから」

オレは本当に目を閉じて作業を続行したんで三橋の抵抗が一時やんだ。
2個くらい置いて適当な高さになったかなと思って一瞬だけ目を開けて確認して
それから、いれるトコロを舐めようとしたら。

「わあっっっ!?!!」

三橋は今度は抵抗なんてもんじゃなくてマジで逃げようとしやがった。
オレが腰掴んでいたからできなかったけど。
でも本気で逃げてる。 ので、オレも本気で腕に力を込めた。

「阿部くん・・・・!!」
「なに」
「ななな何を・・・・・・・」
「舐めんの。」
「!!!!!」

次の瞬間逃げられた。
あんまり素早かったんでしばし呆然としてしまった。
オレだって相当力入れてたから三橋はそれだけありったけの力を出したってことだ。
(ちっっ)
当たり前だけど三橋だって男だから本気で抵抗されたら簡単にはいかない。

三橋はベッドの端まで逃げて体を丸めている。

「何で逃げんだよ!!」
「・・・・イヤ、 だ!!!」   おおきっぱり。
「いいじゃん。」
「絶対、ヤダ!!!」   涙目になってるし。
「何でさ!!」
「だって・・・・・・・汚い・・・・・・・」

オレ別に構わないぜ。  そりゃ気になるってのもわかるけど。

「じゃあきれいにしてたらいいわけ?」

しまった売り言葉に買い言葉っぽくなっちゃった。
仮にいいんだとしても今からシャワー浴びている時間はさすがにないだろ。
三橋はそれには答えずにベッドの端っこでますます縮こまってしまった。 
多分そういう問題じゃないんだろうな。 絶対やらせてくれそうもない。
気が弱いくせに一度決めたらてこでも動かないこいつの性格はよく知ってる。

2人して じーっと睨み合いながら
やっぱり今日は無理かなぁとオレは半ば諦めかけた。
降って湧いたようなチャンスだから物理的な準備もココロの準備も不足気味だし。 時間もないし。
こないだみたくいっしょに出すだけでも満足できるし。
三橋にそう言ってやればきっとホっとした顔になるだろうな。

そう思って口を開いたところで、小さな小さな声が聞こえた。

「・・・・・・・・・・いいから・・・・・」
「へ?」

今なんかまた信じられないことを言われたような気が。

「えーと、もっかい言って?」
「もう・・・いれちゃって・・・・・・いいから・・・・・・」

聞き間違いじゃなかった。
(慣らさないで? って意味?  だよなこれ・・・・・・・・)
いいの?  あんなに痛いの嫌がっていたのに?

「痛いかもよ・・・・・・・??」
「・・・・・・・うん。・・・・・・いい。」

マジでいいの? それに、それ以前に。

「無理じゃねぇかな。」
「・・・・・・・・・・・・。」

三橋は黙っている。  けど目が、  オレから逸れない。  おどおどと揺れない。
絶対無理だと思うけど。 でも。

「やってみる・・・・・・・・?」


オレの問いに三橋は確かに頷いた。













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