素晴らしき友情





もうすぐ阿部の誕生日というある日、花井はふと思い立ち唐突に阿部に言った。

「誕生日、何かやろっか?」

突然の思いつきではあったが、その時花井は本当にそう考えていた。
なぜなら阿部は友人でチームメイトで、まぁ多少モンダイがないこともないけど
部のことでは自分の補佐として何かと助けてもらっているのも事実だ。
たった1つのある点にさえ目を瞑れば、頼りになるいいヤツなのである。

阿部は、でも最初訝しげな顔になった。 予想外のセリフだったからだろう。

「は?」
「だからさ、なんかプレゼントをさ」
「くれんの?? 花井が?」
「うん、あ、でも高いモンはダメだぜ? ま、キモチってことで」
「・・・・・ふーん・・・・・・」
「希望があれば言えよ」
「・・・・・そうだな・・・・・・・・・」

阿部は素直に嬉しそうな顔になった。
それからしばらく考え込んだかと思うと、そのうちその顔が ぱっと輝いた。

「じゃあ物じゃなくて頼みでもいいか?」
「へ?」
「花井にしかできねぇこと」
「え?」
「金かかんねーし、カンタンだから!」

花井は少しだけ嫌な予感がした。
どこが引っかかるかというと 「自分にしかできないこと」 というくだりだ。

「・・・・・・・・・拒否権、あり・・・・・?」
「なし」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

少々引き攣った顔で黙り込んだ花井に阿部は楽しそうに言った。

「あのさ、オレってダチといわゆる『コイバナ』ができねーわけじゃん?」

たらりと、花井のこめかみを汗が伝った。

「別にいんだけどさ、女じゃあるめーしそんな話できなくてもさ」
「・・・・・・・・。」
「けどたまにはさ、人並みにしたいわけよ。 コイビトの話も」
「・・・・・・・・・・・・。」
「だからさ、2時間くらいでいいから今度三橋の話聞いてくんねぇ?」

(えーっと)

花井は思った。

(それはつまり要するに2時間ぶっ続けで三橋に関する惚気を聞けと・・・・・・・?)

ぐったりと、花井は顔を覆った。

「勘弁してくれ阿部・・・・・・・・」
「何だよいーじゃんかよ!」
「いやオレの繊細な神経は2時間ももたねぇ・・・・・・・」
「じゃあ1時間でいい」
「いやだからそういう問題じゃ」
「・・・・・・たまの誕生日なのに」

言いながらくるりと阿部は後ろを向いてがっくりと肩を落とした。
阿部のそんな様子は珍しかったから、花井は内心で慌てた。

「さっきオレ、花井の気持ちが嬉しかったのに」
「え、 あ」
「・・・・・・・・じゃあいいよもう・・・・・・・・」
「阿部・・・・・・」
「もう諦める・・・・・・・・」
「えっ・・・・・・・」
「どうせ三橋を選んだ時からわかってたんだし、さ・・・・・・」
「あ、あのさ、聞くよオレ!!」

思わず言ってから花井は 「あ」 と思った。
俯いていた阿部は花井に見えないようにこっそりとほくそ笑んだ。

それから顔を上げて晴々とした表情を花井に向けた。

「本当か?」
「う・・・・うん、もちろ・・・・・」
「サンキュ花井!!」
「あ、ああ・・・・・・・・」
「オレさ、いっつも思うけど花井はぜってー将来幸せになるよ!」
「・・・・・・・・はぁ・・・・・何で・・・・・・・」
「だってすげーいいヤツじゃんおまえ!」


オレは、 今すぐに、  シアワセになりたい、

と花井は思った。











                                      素晴らしき友情 了
                               オマケ (受難本番)

                                       SSTOPへ







                                                 気の毒に・・・・・・TT