オマケ1







阿部くんの飲み会の予定と理由を聞いた時に、
感じたことが顔に出ないように気をつけたはずなのに。

「おまえも来いよ」

当たり前のように阿部くんは言った。
行きたい、と 行きたくない、がくるくると回ってすぐには返事ができなかった。

「イヤなら無理にとは言わねーけど・・・・・」

阿部くんの言葉に頷きながら、ちょっと泣きたくなった。










魔が差したとしか思えない。

まだ辺りは薄暗くて、そんな時間に目が覚めたのはきっと嫌な夢を見たせいだ。
例の飲み会は今日だなあと思いながら阿部くんの寝顔をじっと見つめた。

押し込めたはずの醜いもんがぞろぞろと出てくる。
胸の中に黒っぽいもんが漂っていて重たくて、気持ちが悪い。
消そうと思っても消えてくれないばかりか、だんだん膨らんでくるみたいで息が苦しい。

阿部くんと女の子が仲良く話しているところなんて見たくない。
阿部くんのファンのコならオレなんか要らない。
だから行きたくなんか、ない。

でもこんなの嫉妬するようなことじゃない。
心配しなくてもとられたりしない、多分。

とわかっていたのに。

魔が差したんだ。

ドキドキしながら  起きませんように、 とだけ願った。








朝になってから青くなった。 オレはバカだ。
鏡を見たらバレちゃうに決まってる。
あんな見えるとこに付けて、怒られる。
阿部くんはそういうの、すごく気を遣ってくれるのに。

なのでびくびくと叱られるのを待っていた。
けど阿部くんは何も言わなかった。
顔を洗った時気付いたはずなのに、なーんにも。
出かける前になって 「今日やっぱ絶対来い」 とだけ言った。 
有無をも言わさないような口調だった。

「夕方まで、講義が・・・・・」

抵抗してみたんだけど、我ながら弱々しくて。

「その後来い。 電話して店教えるから」

声が怒ってるみたいで、後ろめたさの塊になっていたオレはイヤと言えなかった。










いろいろなことを心配しながら店に行ったら

いろいろと大変だった。
全然予想外のことでアタフタした。

お開きになった時、水谷くんの友達の人はとても疲れているように見えた。








店にいる間阿部くんは怒ってないようだったし
その後部屋に帰るまでも機嫌良さそうだったから、すっかり安心していたのに。

帰ったところで怒られた。 

「何でオレが起きてる時に付けねーんだよおまえは!?」

びっくりした。

そこに怒るのか。

「つーか何でオレもそん時起きなかったんだくそっ もったいねえ」

阿部くんはぶつぶつ言ってからむっつりと黙り込んでしまったんで、オレは焦って。

「ごめんなさい・・・・」
「謝んなくてもいいからさ」
「う、 でも」
「今度は起きてる時に付けて」

それはちょっと、とは言えなくて頷いたら阿部くんはにやりと笑った。
嫌な予感がしてその笑いの意味をあれこれ考えていたら
「今度じゃなくてやっぱ今付けて」 とか言われて
その後は実際あれこれ大変なことになってしまって

少しだけ残っていたもやもやとか自己嫌悪とか全部、
きれいになくなっていることに気付いたのは翌朝になってからだった。











                                            オマケ1 了

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                                                     ご満悦 (阿部が) オマケ2