呼び鈴を鳴らしても誰も出てこない。
今日はオレが来る、 てわかっているはずなのに。
昨日の夜にちゃんと確認だってしたし、忘れているってことはないと思う。
予定より大分早目に着いてしまったのも確かだけど。

三橋の携帯にかけてみようと思ってから何気なくドアに手をかけてみたのは
特に深い考えはなかった。
けど思いがけなくドアは開いた。
てことは誰かはいるはず。
でも再度チャイムを鳴らしても、依然として誰も出てこない。
無用心な・・・・・・・・と思いながら玄関に入った。  シンとしている。
おばさんもいないんだろうか。

三橋は庭かな?  と思いつつとりあえずあがった。
勝手知ったるとは言え、人の家だからやっぱり少し気が引けて
足を忍ばせるようにして静かに2階に上がった。
三橋の部屋まで歩く。
部屋のそばまで来てオレの足はぴたりと止まった。

かすかに声が聞こえたからだ。 三橋の声。
それも聞き慣れた声、 が。

でもそれは特別な状況でしか聞けない声だった。  

ベッドの中   だ。



ほんの一瞬 「浮気」 という言葉が浮かんで焦ったけど。
でもすぐに、それはあり得ないと打ち消した。
自分が嫉妬深いのはもうよーくわかっているけど、そこまで疑っているわけじゃない。

てことは。



そこまで考えてオレは中で三橋が何をやっているのかわかってしまった。

こういう時は武士の情けで見ないでやるほうがいいんだろうな
とは理性では思ったけど。

どんな顔してヤってんだろう。

ちらりと思ったら見たくて、その誘惑に勝てなかった。
なので音がしないように細心の注意を払ってそっとドアを少しだけ開けて
隙間から中を覗いてみた。

三橋はベッドの向こうに座っていて胸から上しか見えなかったけど、
その横顔を見てオレの予想が当たっていたことがわかった。
目を瞑っていて、頬が上気している。

色っぽい顔。

思わず自分の体も熱を帯びそうになったけど意識して無理矢理散らしながら
オレは満足した。  だって。
オレとしている時のほうが何倍もいい顔してるから。

終わったら玄関に戻って何食わぬ顔してまたチャイムを鳴らしてやろう。

その時点ではそう思っていた。
見られたってわかったら死ぬほど恥ずかしがるだろうし。
今日は一応真面目に勉強しに来たんだし。

けど。

達する瞬間三橋が震える声で発した言葉を聞いて。

理性がどっかいっちまった。




聞いた途端にオレはソッコーで中に入って、びっくりして目を白黒させている三橋を
有無をも言わさずその場に押し倒してしまった。





だって、  呼ばれたんだもん。



本人呼んだつもりはねーだろうけど。






我慢できねーよな やっぱりさ。













                                                声  了

                                               SSTOPへ






                                                  そうだろうねキミは。  (オチのないオマケ