事件後日談 その1





(大分薄くなったな・・・・・・)

三橋は入浴した後体をふきつつ鏡を見ながら、自分の首の付け根のあたりを触った。

あの日はいっぺんにいろいろなことが起きた。

まず田島の邪推とか阿部の気の回しすぎとかのん気に考えて
全然本気にしていなかったことが、
2人の杞憂ではなく事実だったことに驚いた。

ショックだったし、何より怖かった。
阿部の声を聞いたときは本当に嬉しかった。

そしてその後、
家まで送ってくれた阿部が。

そこまで思い出して、三橋はかーっと頬を染めた。

(あの時は)

(びっくりした。 けど。)

不思議と全然イヤじゃなかった。

それどころか先輩にやられたときは
怖くて痛くて (無我夢中で抗っていたのでよく覚えてないけど) 嫌悪感しかなかったのが。

同じことを阿部にやられたときは。

(・・・・全然違う、 感じがした・・・・な・・・・・・)

何というか。 上手く言えないけど。

(・・・痛かったのは痛かったんだけど・・・・でも・・・・・)

ぞくぞくした。


その時の感覚を生々しく思い出して三橋はさらに顔を赤くした。

(・・・・何でかな・・・・・・。)



あの日の翌日、三橋は少しドキドキしながら登校したんだけど
阿部はいつもと同じ顔をしていた。 普通だった。
それで三橋は (本当にあったのかな?) と思ったくらいだ。
でも痕はしっかり体に残っていた。

証明のように。



阿部が思い切り濃く付けたその痕は (着替えのたびに見えないようにするのに苦労した。)
しばらく残っていたけど少しずつ薄くなってきた。
もうすぐ消えてしまうだろう。

そのことに三橋はホッとすると同時に
なぜか寂しいような気もするのだった。












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