ファンファーレ −1



  SIDE HANAI


花井はつらつらと考えていた。

最後の試合が終って実質的に自分たち3年生が引退した夜のことである。

一番頭を占めたのはもちろん、頑張ってきた日々に対する感慨や
今後の道のことだったが、それ以外にももう1つ。
阿部と三橋について、である。

2年の後半くらいから花井には漠然とした予感があった。
阿部は引退するまで三橋に自分の気持ちを言わないだろう、というそれは
さしたる根拠もなかったが確信に近かった。
恋愛のごたごたのせいで野球に支障が出るのは勘弁してほしい、
というのが花井の正直な本音だったが、その恐れや懸念は自分だけのものじゃなく、
誰よりも阿部自身がそう考えそうに思えた。
阿部と三橋の野球バカっぷりは筋金入りだからだ。
それがために今まではある意味安心していたわけで、裏を返せばそれも今日までなのだ。
阿部が行動を起こすとすれば、この後卒業までの間じゃないだろうか。

(どうすんのかな、あいつ・・・・・・)

阿部が、いやどちらかが言いさえすれば友達兼バッテリーに
「恋人」 という関係が加わるだろう。
でも三橋からそれを言うのは考えにくかった。
入学時を思えば随分変わったとはいえ、野球を離れた部分で
他人に対して強引になれないところは相変わらずだからだ。
言うとしたら阿部のほうだろうと花井は踏んで仮に晴れて恋人どうしになったら、と想像したら
阿部の周囲で鳴るファンファーレの図が浮かんでしまって、1人で吹き出した。
実際阿部にはそれくらいの事だろうが。

タガが外れたらどうなるのかと考えると笑い事じゃないが、
チームへの支障はこの先は大してないだろう。
花井にとってそれは、間違いなく心休まることだった。
が、いつ2人の雰囲気が今まで以上に怪しくなっても大丈夫なように
心構えしておくのは大事であり、必須でもある。

うん、と花井は頷きながら、現実味が薄い感覚もどこかにあった。
当然のように告白する気がする一方で 本当にするか? と疑問も湧く。
阿部が今に至るまで我慢してきたのは野球に支障が出ないように、だけでなく
片想いと信じていることも大きいだろう。

(卒業後かもしんねーな・・・・・・)

あるいは双方とも気持ちを吐露せずに友達のままで終るのかもしれない。
可能性としてはあり得るのだ。
それもこれも推測に過ぎないと、ふと我に返って苦笑した。
大きなお世話ってやつだ。
実際2人がどうなろうと第三者なことに変わりはないし
相談されているわけでもない以上、気を揉むのもバカらしい。
成就しなくてもそれならそれで別に構わない、とその時花井は思った。











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