対策案を考えてみる







何事も落ち着いて考えることが大事だと、オレは休み時間に冷静に思考を巡らせた。
考えなくてはいけない、気になっていること。


今日は三橋が目を合わせてくれない。
今朝目が覚めた瞬間から合わせてくれない。

思い当たるフシがあったから少々焦りつつ
「もしかして怒ってる?」  と聞いたら顔を横に振った。
蚊の鳴くような声で 「・・・・恥ずかしい、だけ」 と目を合わさないまま言った。

本当かな?  と疑いながら様子を観察してると、確かに 「怒り」 は感じない。
オレが寄ると真っ赤になるし。
本当に恥ずかしくて顔が見れない、 てだけなのかも。

そんなに恥ずかしかったのかな。
そりゃあさ、ちょっとだけ変わったかっこさせたけどさ。
少しは恥ずかしかったかもしんないけどさ。
どうせどんなかっこしたって、あいつの体で
オレの見てないとこも触れてないとこも全然ないんだし。
今さらそんなに尾を引くほど恥ずかしがるなんて思わなかった。


というのはオレの理屈であって、三橋にとっては
顔が見れないくらいのモンだったわけね・・・・・・・・・

これじゃあ練習にまで響くような気がしてまずい。
というか、実際朝練では少し響いた。


そこでオレは次に真剣に今後の対策案を考えてみた。

1: もう変なかっこはさせないで普通で我慢する。
2: 翌日練習のない日だけさせていただく。
3: 逆にいろいろなパターンをもっと増やしてマヒさせる。


うーん、 としばし悩んでから、

3にしよう。

と結論を出した。

すっきりして隣を見ると花井が妙な顔でオレを見ていた。

「なんだよ?」
「阿部・・・・・・・・今なにか良からぬことを考えてなかった?」

何でわかったんだろう。

びっくりしているオレに花井は続けて言った。

「三橋にあんま負担かけんなよ?」

また図星をつかれた。  今度は感心した。

「何でわかんの?」

素直に聞くと花井は はーっとため息をついてから言った。

「おまえ、三橋のことについては顔に出過ぎ」

そういえばそれ前も言われたような、 と思いながらふと視線を感じて見回して、
三橋が廊下からオレをじっと見てることに気付いた。
ひらひらと手を振ったら逃げてっちゃった。  傷ついた。

さらにその後。

三橋はしばらくオレに 「お預け」 を食らわせやがった。

てことは。 良からぬ企てがバレたに違いない。   多分 「顔」 だけで。

他のヤツにどう思われようと別に構わないけど、
三橋に内緒にしたいことがバレるのは困る。
オレは今度は顔に出ないようにするための対策案を真面目に考え始めた。

なんてことを花井に言ったら花井は激励してくれるどころか
またもやため息をついてから一言、言った。

「・・・・・・・・無駄だと思う。」












                                               了 (NEXT

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                                                        私もそう思う。