聞くまでもない
                 * 伝説の阿部です。






「オレはねー髪の長いコがいいな」
「オレは長さにはこだわらないかなぁ」
「茶髪はパス」
「あー、それオレも」
「オレは似合ってりゃ何でもいいぜ?」
「オレは」
「「「「「 阿部には聞いてない 」」」」」

阿部は憮然とした。
花井と田島と泉と栄口と水谷はきれいにハモった後、
また元の話題である、 「好みのタイプ」 に戻った。

「明るいコがいいな」
「オレも!!」
「オレは優しいコ」
「自分を持ってるコがいい」
「おーすげー渋いなそれ!」
「オレは」
「「「「「 だからおまえには聞いてねーってば! 」」」」」

これは何かのイジめか、 と阿部は思った。



「胸はあったほうがいいなぁ」
「うんうん」
「えー、オレはちっちゃくてもいい」
「オレは足にこだわりたい!」
「オレ、ウエスト」
「オレは」
「「「「「 黙れ阿部 」」」」」

阿部の目が不穏に光った。



「背はちっちゃいほうがいい」
「オレどうでもいい」
「オレもオレよりは低いほうがいいなぁ」
「なんで?」
「だってキスすんのに背伸びすんのってどうよ?」
「オ」
「「「「「 阿部うるさい 」」」」」

阿部はキレた。

「何だってオレには言わせてくんねーんだよ!? オレにだって好みくらいある!!」

5人は顔を見合わせた。

「おまえの好みは知ってる」   泉が言った。
「髪は茶色くてぽやぽやしてんだろ?」   田島が言った。
「性格は卑屈だけど頑張り屋」    花井が言った。
「胸はぺったんこ」       水谷が言った。
「背は5cmだけ低い」     栄口が言った。

「・・・・・何でわかるんだ?」

(((((わからいでか!)))))

と、 5人は内心でため息をついたのであった。














                                                了 (NEXT

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                                                    学校中が知ってる阿部の好み。