連想






ぱたりと  落ちた汗を見て。

瞬間的に思い出したのは別の汗だった。

「あっちー・・・・・・・・・・・」

阿部くんの声に我に返る。

もちろん、今は練習中で。
水分補給のために飲み物を摂ろう、という阿部くんの提案で
ちょっとだけ投球練習の手を休めたつかのまの時間。

なのにオレが唐突に真っ赤になったもんだから(多分) 阿部くんは変な顔をした。

「どした? 三橋」

言いながらオレに手を伸ばしてくる。  反射的にその手を掃ってしまった。

「あ」

阿部くんは少し傷ついた顔をした。  オレは慌てた。

「ごめ・・・・・・・」
「・・・・・なんだよ」

その口調はもう怒っていて。

でもオレは焦りながらもまだ顔が火照っていて、阿部くんはまたさらに妙な顔になった。

「なんて顔してんだよ」

言えない。 

阿部くんの顎から落ちた汗を見て、別の汗を連想した、 なんて。

ある状況下で、
オレの 体に ぽたりと、 落ちる汗。
きつく目を瞑りながらそれを体に感じる時、オレはいつも幸福な気分になる。
それだけ、阿部くんが夢中になっている、 証のような気がして。

でも今は。

真夏の炎天下で練習中で。 そんなコトを連想して勝手に真っ赤になる自分なんて。
絶対に阿部くんには、知られたくない・・・・・・・・・・・・・


と思っていた、 のに。

「今なんかヤらしいこと考えたろ」

阿部くんの言葉にオレの心臓が跳ねる。
そしてもっと顔が赤くなるのがわかった。

「ち、 ちが」

否定した声もうろたえちゃって、これじゃあ 「そうです」 と言ってるようなもんだと。

思うとますます全身が熱くなる。  恥ずかしくて死にそうな気分になる。

でも阿部くんはなんで、わかったんだろう・・・・・・・・・・

「何でわかったのかって思ってる?」

阿部くんは言って、にやりと 笑った。

それから周りに誰もいないのに、内緒話するようにオレの耳に口を寄せて囁いた。

「だってオレも、おまえの汗見て同じこと考えたんだもん。」










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                                                  2人してしょーもない・・・・・