美味しそうなモノ







ぼーっと雲を見ながら
「あの雲、おいしそう・・・・・・・・・・」
なんてつぶやいている、 てことはオレの相棒兼恋人は今 腹をすかせてるってことだ。

いつものようにコンビニでなんか買うことになりそうだなぁと
ぼんやり思いながら もくもくと歩く。
次に三橋は道端の花壇をじーっと見ている。

「これキャベツに似てる・・・・・・・・・・」
「あー、うん。  そうだな」

確かに似てる、 と思いながら次の言葉を予想してたら当たった。

「おいし、 そうだなぁ」
「食うなよ?」

半ば本気で言ってしまった。
三橋はたまにぶっ飛んだことをしでかしそうで何だか危ない。

「ま、まさ か」

慌てて心外そうに言っているけど大いに怪しい。

「あれも美味しそう・・・・・・・・・・」

という言葉に目を上げると今度は三橋は床屋のくるくる回るやつを見ていた。
オレは少し呆れた。

「いくら腹減ってるからって」
「・・・・・う・・・・・・・」
「何でもかんでも食いもんに見立ててんじゃねーよ」

珍しく ぷーっと不満気な顔になった。

「阿部、くんはそんなこと、 ない?」
「は?」
「食べ物じゃなくても、美味しそうに見えちゃう、こと」

ねーよ、  と言おうとして、  あ、あるな、  と気付いた。
なので三橋の耳に口を寄せて囁いてやった。

「ベッドで」
「えっ」
「おまえの・・・・・・・とか」

かあぁ!   と音がすんじゃねーか、てくらいの勢いで三橋の顔が朱に染まった。

それきり三橋は真っ赤な顔のまま黙りこくってしまったけど。

オレは別の意味で腹が減ってきた。

食べ物じゃないのにやたらと美味そうに見えてしょうがないもの。

が、 食いたくて仕方なくなってきた。

なのでまた、今はピンクに染まってる耳に囁いた。


「おまえが何か食ってからさ、オレもお持ち帰りして食っていい?」












                                                 了(NEXT

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