ひよことボタン





家庭科って、昔は男子はなかったらしいんだよな。
でも男女差別だからか男にも必要だからか何だか知らないけど、今はある。
料理だって裁縫だってノルマだからしなきゃならない。 どんなにタルくても。

げんなり思っちゃったのは、決してそれがオンナの仕事だとか思っているわけじゃなくて、
またもや針で親指をぶっ刺してしまったからだ。

痛みを紛らすために手をぶんぶん振りながら ふと斜め方向を見ると
阿部が何やら熱心にしつけ留め?の真っ最中だ。
心なしか何だか楽しそう。
裁縫が好きなんて知らなかったぞ・・・・・・・・・・

「おまえは何作ってんだよ」

作業をサボりたい一心で話しかけたりして。

「パジャマ」

ふーん、と思いつつ実は前からすごく気になっていて聞いてみたかったことがある。
クダンの「パジャマ」用の布地の柄が。

「・・・・・・なぁ、何でひよこ柄なの?」
「え?」
「その布」
「似合うと思って」

はぁ? と叫びたいのを寸前でこらえた。
同時に頭の中にひよこ柄のパジャマを着た阿部の姿を思い浮かべてみる。

・・・・・・似合わないにも程がある・・・・・・・。
まぁ面白い、かもしれないけど。

オレが自分の想像に 「う」 と呻いたり、 「ぷ」 と笑うのを抑えたりしている間にも
阿部は手を休めない。
やけに熱心だ。  そこでオレはふと気付いた。

「あ、前開きにすんだ。 かぶる型じゃなくて」
「うん」
「手間増えるじゃん・・・・・・」
「だな」

だなって・・・・・・・・・

「点数良くなるから?」
「ボタン付けたいから」

はい???

「ボタン?」
「うん」
「・・・・・付けるのが好きなのか・・・・・・?」
「外すのが好きなんだ」

はぁ????
・・・・・・・・・・ワケわかんねぇなこいつ・・・・・・・・・
とりあえず現実的な忠告はしといてやろう。

「あのさ、その柄、おまえに全然似合わねぇと思うんだけど。」
「オレのじゃねぇもん」

・・・・・・・・・・・・・・。

今まで気付かなかったオレがバカだった、

とオレは心底自分に対して呆れてしまった。










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