2人いたらやりたいこと







自分がもう1人いたらいいなーと思うことって、 そりゃ誰でもあると思う。

泉くんがそれを言い出した時は、皆で図書室で勉強している時だった。

「そしたらさ、1人が勉強している間にもう1人が練習できるじゃん?」
「いいなそれ!」

栄口くんが笑いながら同意したけど、その笑いはちょっと力がない。
取り組んでいる問題がわからない とさっきから唸っていたから、きっとそのせい。

「1人がラーメン食べて、もう1人が焼肉!」

田島くんの言葉に  (それ、すごくいい、かも!!)  と何度も頷いたら、
「おまえららしいなぁ」   と花井くんに笑われてしまった。

「1人が練習と勉強担当で、もう1人はやっぱ遊びたい〜」

そうぼやいたのは水谷くんだ。
オレだけじゃなく、みんなも目の前の公式だの文法だのを覚えるのに
疲れてるんだなーと変なことで安心していたら。

隣の阿部くんがちらっとオレを見たのがわかった。

阿部くんは自分が2人いたらどうするだろう。
やっぱり勉強と練習かなぁ とぼんやり思ったところで。

つぶやきが聞こえた。

「オレがもう1人いたら」

知りたくて思わず耳を寄せた。 
だってそうしないと聞こえないくらい、とても小さな声だったから。

でもその内容を聞いて。

しばらく勉強できなくなった。

だけでなく泉くんとか沖くんに
「三橋どうしたの?」 とか 「顔真っ赤だよ?」 とか
不審気に言われて余計に焦ってしまって。



聞かなきゃ良かった、        と思った。













                                             了 (NEXT

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                                                    何を言ったんだか。