アベがいっぱい







ある日栄口くんが言いました。

「最近三橋、顔色悪くない?」
「え・・・・あ・・・・ちょっと・・・・・・・・・寝不足、かも。」
「何で?」
「・・・・・なかなか寝付けなくて・・・・・・」
「羊 数えれば?」
「前はそうやっていたんだけど・・・・・・・・・・」
「けど?」
「阿部くんが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・(ヤな予感・・・・)。」
「眠れないときは 『羊の代わりにオレを数えろ』 って言うから・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・(阿部・・・・・・・・)。」
「阿部くんがひとり阿部くんがふたりっ て増えていって」
「・・・・・・・(こわ・・・・・・)」
「夕べは阿部くんが856人になって」
「・・・げ・・・・・」
「却って目が冴えちゃって」
「そりゃそうだろうな・・・・・・・・・。 怖いもんな。」
「え・・・・・・・怖くない、よ」
「・・・・・・あ、そう・・・・・・・」
「・・・・どきどきしちゃって」
「・・・・・・・・ふーん・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・。」
「三橋さ。」
「へ?」
「眠れないとき阿部を数えるのはやめたほうがいいと思う。」
「え・・・・・・・でも阿部くんがそうしろって」
「黙ってればわかんないじゃん」
「・・・・うん・・・・」






そんな会話があった数日後、栄口くんはまた聞きました。

「三橋まだ寝不足?」
「・・・・・・うん・・・・・」
「まだアベ数えてんの?」
「や・・・・羊に戻したんだけど・・・・・・・・」
「うんうん」
「羊の顔だけ阿部くんになっちゃって・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・(げっ)・・・・。」
「余計眠れなく・・・・・・・・・」





・・・・・・・・・・・ダメだこりゃ。









                                    了(NEXT

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                                                 もはやホラー。