つるり (後編)





隠したいキモチは痛いほどわかるけど。
後ろを向いていると余計に危険だって、わかってんのかなこいつ。

「勃ってんじゃん」

ずばりと指摘してやった。 俯きながらじりっと逃げていこうとする腰を
両手でしっかりと捕まえた。

「あ、阿部、 くん」
「大丈夫オレもだから!」
「え?!」

本当に驚いたような声を出したところを見ると、
三橋はオレの状態に気付いていたわけじゃないようだ。
なーんだ、  とまた笑ってしまった。 同じじゃんか。
オレの背中を洗いながらむらむらきたんだなきっと。

オレはいろいろな意味ですっかり嬉しくなって、思い切り顔がニヤけちゃったんだけど。
三橋のほうはそれどころじゃないようで。

「こ、ここ、じゃ ダメ・・・・・・」

もがきながらぼそぼそとつぶやいた声はかなり焦っている。
それはオレもそう思うんだけど。 でもな。

「簡単に入りそうじゃねぇ?」
「へ」
「泡だらけだし」

言いながら後ろから手を回して三橋の手を無理矢理外して、暴いてやる。
すでに泡にまみれているそれを扱いてやった。  泡のせいですごくやりやすい。  

「は・・・・・・・・・」

三橋が息を呑んで身を捩った。 けど本気の抵抗じゃない。
どっちかってーと 「悶えた」 という感じ。
片手で三橋のを嬲りながら、自分のに泡を擦り付けてみたらもう
我慢できなくなってきた。
さっきごちゃごちゃと言い聞かせた理性の声なんかさっくりと地球の裏側に飛んでった。
でも仕方ねーと思うんだよな。
好きな相手の泡まみれのピンクの肌を前にして、耐えられるほうがどうかしている。
オレだけならともかく、三橋もその気になってんだったらこっそりいたせば大丈夫かも。

なんて内心で言い訳してみる。
手を上に持っていって泡だらけの乳首もこねてやったら
またぷるぷると細い体が震えた。 息遣いも悩ましい。 
耳元に口を寄せて囁いた。

「なぁ、 しよ?」
「え、  でも・・・・・・・」
「すぐ終わらせるから」
「・・・・・・・・・。」

迷っている、とわかったけど、明確な拒絶がないのをいいことに
今度は三橋の尻にも泡を擦り付けてやる。

「ん・・・・・・・」

やっぱりはっきりとは嫌がらない。 絶対迷っている。
つーか体は明らかに嫌がってないから 「したいけどでも場所がちょっと」 とか
大方そんなとこだろう。
ここでじっくりとお伺いを立ててる時間はない。
というか泡が。  どこもかしこも泡だらけで。
泡が泡で泡だからきっとつるりと。

(入れちゃえ)

考えるのが面倒になって、腰を掴んで強引に引き寄せた。

「あっ」

そのまま後ろからあてがってぐっと押し込んだら。
期待は裏切られることなく本当に  つるん  と入った。  そこまでは良かったけど。

「あ、 あぁ、」

上がった嬌声は予想以上に大きく響いた。 ので少し慌てた。

「三橋、声」
「ん」
「ここでは我慢しろ」
「う、 ん・・・・・・・・」

頷いたんで、動き始めたら。

「あぁ、 ん」

ダ メ じゃ ん !!!   と焦りながらうっかり煽られた。
いつもより色っぽい声出しやがって。 それでも何とか自制して、1回止まった。

「声出すなって」
「ム、ムリ・・・・・・」

涙声だ。 でももう止まれない。
三橋も逃げる素振りがないってことは同じように止まれないってことだ。
判断しながら、無意識にまた腰が動いちゃった。  だってあんまりキモチ良くて。

「ふぁっ」

何だかいつもより素直に声が出てくるのはナゼだ。
違う状況だから興奮してんだろうか。 オレはそうだけど。 三橋もそうなら嬉しいけど。
でもマズい。
なので急いで三橋の体を起こして自分のほうに引き寄せてから、
後ろからぎゅうっと口を塞いだ。  そうしておいてから下から突いたら。

「ん、 んぅ」

くぐもって大分マシになったんで、そのまま激しく突き上げた。
すげー気持ちイイ。
長くしていたかったけど、やっぱヤバいし、溜まっていたしで (オレは)
焦らさないでさくさくと追い上げる。

「ん
っ」

三橋が達するのを確認してからオレも我慢しないで解放した。
お互いにいつもよりずっと早かったし、声も最小限に抑えられた、 と思う。

「はー・・・・・・・・・・・」

余韻を楽しんでから、思い出して口を離してやった。
けど、その自分の手を何気なく見てぎょっとした。
慌てて下を抜いて、それから三橋の様子を改めて見て。

「み、三橋?!」

オレは焦った。









○○○○○○○

そーっと居間を覗いたら、目的の物はおじさんの座っているすぐ傍にあった。
何気なく近寄ってそれを箱ごと取ったら、案の定聞かれた。

「お? どうかしたの?」
「あ、ちょっと鼻血出しちゃって」
「え、廉が?」
「はぁ」
「のぼせたのかな?」
「はぁ。 多分」

答えながら後ろめたくて目があらぬ方向を泳いでしまう。

「僕がやろうか?」
「あ、いや、大丈夫です。 オレ世話します」
「そう? 悪いね?」

とんでもないです!!!! 
という気持ちを込めつつ、せめて爽やかに見えるように笑ってから
急いでまた戻った。  三橋は裸のまま洗面所でぐったりと伸びている。

「大丈夫か・・・・・・・・・・?」
「う、 ん」

頷きながらも全身が真っ赤に火照ってるし、顔は血だらけだし全然大丈夫そうじゃない。
とりあえずティッシュで鼻血の処理をしてやる。
それから水を汲んで飲ませた。
三橋は半身を起こして美味そうに飲み干した、はいいんだけど
その後またくたりと横になってしまった。
のぼせたせいで貧血を起こしたんだ。
ティッシュといっしょに持ってきたうちわで扇いでやりながら
少なからず自己嫌悪を感じてしまった。
自分の流血のほうは心配してたけど、三橋が出すとは考えてなかった。
けど充分予測できる事態だったのに。



ようやく起きれるようになってから、居間に戻るとおばさんが呆れたように言った。

「まあ廉、のぼせちゃったんですって?」
「う、うん」
「阿部くんに迷惑かけてダメじゃない」

いやそんな。
とかさらに小さくなるオレ。 とそこで。

「あら、2人とも髪洗ってないの?」
「あ」

言われて気付いた。 そういえばそうだ。 
だってあの後はもうそれどころじゃなくなって。
失敗した、と思いながらも 「そうか」 とオレは今後のことを前向きに考えた。


その後何食わぬ顔で夕食をご馳走になってから、
部屋に2人で入って はーっと息をついて。    ふと、不安になった。
顔を見るといつもと同じ様子だけど一応念のため。

「三橋、あのさ」
「へ?」
「・・・・・・・怒ってる?」

ふるふると、三橋は顔を横に振った。

「ほんとに?」
「うん」

安心したら、素朴に疑問が湧いた。

「オレ、おまえがおばさんに別々に入るって言うかと思ったのに」

言い訳を兼ねて言ってみる。

「・・・・・オ、オレ、まさか自分が」
「はぁ」
「あ、あんなになっちゃうなんて、 思ってなかった、 から」

それはオレもちょっと意外だった、 と納得しながらも でも。

「・・・・・おまえはともかく、オレがヤバいって思わなかったのかよ!?」
「・・・・・・・少し・・・・・・・」
「少 し どこじゃねーよ!!!」
「ご、ごめんなさ・・・・・」
「いいケド。 ・・・・・・結局ヤっちゃったし」
「・・・・・・・・・・。」
「すげーヨかったし」

オレの言葉に俯いたその顔が恥ずかしそうに染まっていて、
そこには恐れていた怒りとか拗ねたような色は全然なくて改めて安堵した。
だけでなく、密かにオレは舞い上がっていた。
だってやっぱり三橋だってオレのハダカ見て欲情したりすんだなっていうのは
単純に嬉しい。 
大体求めるのはほとんどオレからで、でも三橋だってオレとするの好きだってことは
頭ではわかっているけど、目に見えれば嬉しくないわけがない。
いい気分になりながら 「そうだ」 と思い出した。

「でも1つ学習したな!」
「へ?」
「今度はさ、全部洗ってからにしような?」
「・・・・・・・オレは、別のこと、学習した、よ」

珍しく前向きな発言だな、  と思った。

「なにを?」
「阿部くんと、いっしょに、 入らないほうがいい・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・。」

怒ってないのは本当みたいだけど。

オレの学習が今後生かされることはないようだった。














                                            つるり 了

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                                                 当たり前だよと三橋くんに言いたい。