正しいデートのありかた - 5





でもその時点では、この場でいたそうなんて思ってなかった。 だって外だもん。
ヤってみたい気もするけど外だもん。 すげー燃えそうだけど外だもん。
周囲を遠くまで見渡してもだーれもいないけど、外だもん。
オレはいいけど三橋が嫌がる。

けどお互いに出しっこするくらいなら大丈夫かな、 ってのはもちろん思ったので、
後ろから三橋のパンツの中に問答無用で手を差し込んだ。
緩く起ち上がったそれを握って扱いてやる。

「あ、 やぁ」

言葉とは裏腹の悩ましい吐息に煽られながら、僅かに不安も湧いた。
本気で嫌がっていたらどうしよう。 そうだったらやめてやりたい。
できるかどうかは別として。
なら最初からするなという自分突っ込みは全力で無視。
だって流されてくれるかもしんない。
その期待のもと、試すような気持ちでまた囁いてみた。

「もっと腰浮かして?」
「・・・・・ん・・・・・・」

今度は素直に頷いた。 内心で小躍りした。 これは嫌がってないきっと絶対。
三橋は前に手をついて、少しだけ腰を浮かした。
一旦離してやってから下着だけずり下ろした。 ズボンをそのままにしたのは外だから。
ぷるんと飛び出たモノはもう完全に起ち上がっていて
俄然やりやすくなったのをいいことに握り込んで、せっせと手を動かした。
またたく間に濡れてきて、多分湿ったヤらしい音もしてるだろうけど
波の音に紛れてそれは聞こえない。
三橋の背中が不自然に揺れ始めた。 つまり悶えてる。

「あ、 あぁ・・・・・・」
「キモチいい・・・・?」
「ん、 あ」
「・・・・・・・・。」
「あ、 ダメ、 も う」
「・・・・・・イキそう?」
「ん、 あ、あ」
「いいよイって」

手を速めてやったら三橋は小さく震えてから放出した。
しばらく断続的に出続けて、何だかいつもよりいっぱい出たみたい。
乾いていた砂に黒いシミができたのがとってもヤらしく見えて、
それだけでオレのも破裂しそうになった。 堪えたけど。

はあはあと、荒い息をつく三橋にまた囁く。

「・・・・・こっち向いて?」
「・・・・・ん・・・・」

三橋はおずおずとオレのほうに向き直ってくれた。
潤んでいる目が色っぽくて、衝動のままにキスをした。
相当がっついた勢いになった自覚はあるけどどうにも止まらない。
なんかの歌詞にあったなこれ。

「んん、 ふっ」

オレのほうも三橋の手でしてもらおう、と舌を嬲りながら考えた。 
正真正銘嘘偽りなくそう思った。

だったもんで。
さんざん貪ってから口を離して、そう頼もうとしたところで、
三橋がふいに膝立ちになったかと思うと、尻を覆っていた自分のズボンを
当然のように下ろし始めた時驚いた、 なんてもんじゃなく仰天した。

「え、おまえ・・・・・・・」

何してんの? と危うく聞きそうになって、呑み込んだ。
だってものすごい愚問だ。  誰がどう見てもこれはオレのためだと思う。
「暑いから脱いでるだけ」 なんてあり得ないだろ状況的に。
頭でそう理解しながらも信じられない。 だって外だもん。
こんなとこでやっちゃっていいんだろうか。 オレはいいけど。 けど三橋は。

ぐるぐるしながら呆けているうちに、三橋は太腿までパンツとズボンを下ろしてしまってて
オレはその真ん中をまじまじとガン見した。
一度果てたはずのそれはなぜかまだ半起ちだった。 キスのせいだきっと。

「して、いいのか?」

声が上ずった。 我ながらかっこわるい。
でもどうせ今日はかっこわるいのオンパレードだから今さらだ。

「え、 ・・・・・・しない の?」
「・・・・・マジでいいの?」
「え、あの、 オレ・・・・・・・してほし・・・・・・」

ぐらりと体が傾いたのは眩暈がしたからだ。 
慌てて体勢を戻しながら、真剣に鼻血の心配をした。 大丈夫みたいだったけど。
恥ずかしがりのくせに時々変なところで。

(大胆だよなこいつ・・・・・・・・)

と感心したところでマズいことが起きた。
もはや何が起きても驚かないオレさまな心境だったけど、
あっ と焦ってしまったのは、この後すぐに支障が出そうだとわかったから。

三橋はなぜかバランスを崩して後ろに尻餅をついた。 
それだけならなんてことないけど、ついた場所がちょうどさっき黒いシミができた辺りで。

「あぅ・・・・・」
「・・・・・・なにやってんだよ・・・・・」

言ってもせんない文句を言う。  だってどうなってるかっつーと多分。

「・・・・・・・ちょっと後ろ向いて見せて」
「うう・・・・・・」

三橋はまた腰を浮かしてから素直に言うことをきいた。
案の定砂まみれになっていた。 粘着質な液体まみれの砂が
これから使わせていただきたい辺りに満遍なく。

「・・・・・・・・。」
「・・・・・・い、いっぱい、付いてる・・・・?」
「・・・・・すごく」

言いながら、手ではらってみた。 あまり落ちない。 当然だ。
荷物の中にティッシュがあったはずだと探し始めたところで。

「で、 でも 平気 だよね?」

声に目を上げたら三橋はよつばいになって さあどうぞのポーズになっていた。

(うっ・・・・・・・・!!)

反射的に鼻を押さえた。 無事だったのが奇跡としか思えない。
そんなかっこを突きつけられて、ティッシュを探し続ける余裕なんか あ る わ け な い。
どうしてこう容赦なく煽るんだこいつは!!

心で絶叫しながら、オレは荷物を放り出した。
すぐさま前を開いて今にも破裂しそうな自分のを取り出した。
三橋の尻の砂をもう一度おざなりにはらってから指を入れたら、
何にもしてないのにもう柔らかい。 だもんですぐに2本に増やして、掻き回してやる。

「はっ・・・・・・・」

三橋の腰が誘うように揺れて、全然我慢できなくなった。 入れる前に出そう。
そうならないように慌しくあてがって。

「もう、いれるぞ」
「ん・・・・・・・」

一気に半分くらい突き入れた、はいいけど。 
焦ったせいでそこの周囲の砂が若干中に入った、ような気が。
いつもはないざらざらした異物感がある。 ほんの少しだけど確かにある。
そんでもって痛い。
オレが痛いってことは三橋も痛いんじゃないだろうか。
それに奥まで入ったら後から出すのが大変だ。

と崖っぷちぎりぎりってくらいのところで我に返って、深呼吸してから一回抜こうとしたら。

「あ、阿部く、 ・・・・早く・・・・・・」

また三橋の腰が揺れた。
崖から転落する自分の映像が瞬間浮かんだ。
襲い来る衝動と波の音が妙にシンクロしてんな、
なんて心底どうでもいいことがついでに掠めた。

「あぁっ」

腰を掴んで思い切り突き上げたら、三橋が喘いだ。
続けて大きく動くと、波の音に混じって三橋の途切れ途切れの声が耳に届く。
音だけ聞いていると何だか夢の中にいるみたいで現実感がない、
けど生々しい感触は夢でなんかあり得なくて、気持ちよくて。

(ダメだ・・・・・・・・)

これは絶対ロクにもちそうにないとわかったんで、
三橋の前を握って強く扱いてやったら再び簡単に達した。
それを確認しながらぎゅっと締まる内壁に耐える術もなく、数回突いただけで
あっけなく昇り詰めてオレも達してしまった。
強過ぎる快感にその瞬間目の前が白くなった。

「はー・・・・・・・」

息を1つ吐いてから、余韻に浸る時間をあまりもたずに抜いたのは
くらくらしながらもどこかで 外だ、という意識が働いたからだ。
すげー燃えたけど、出してしまえばやっぱり落ち着かない。
抜くと同時に思い出した。 失敗した。

(ゴムし忘れた・・・・・・・)

だってそんな余裕なかった。
あれで理性を保てる男がいたらお目にかかりたい。
ただでさえ踏みとどまれるぎりぎりのとこだったのに。

まだ荒く息をつきながらそのままの姿勢でいる三橋のそこから、
オレの残滓がとろりと零れ落ちるのが目に映ってまた眩暈がした。 卑猥過ぎる。

「・・・・・ごめん三橋」
「・・・・・へ・・・・・」
「ゴムすんの忘れたオレ」
「え、 へーき」
「平気じゃねーだろ・・・・・・」

情けない声になったのは、急にいたたまれない気分になったからだ。
だってこれって最低じゃないだろうか。
いくら合意といってもこんな外で慌しくて、しかも砂まみれでさらにおまけに砂入っちゃって
アレも入っちゃって腹壊すかもしんなくて、それなのに 「平気」 と言って笑ってくれる三橋。

何だか泣きたいような気分になった。

「ちょっとそのままで待ってろ」

言い置いてからまたティッシュを探した。
ちゃんと持っているのは男の身だしなみだから。 いつ何時必要になるかわからないから。
でももっと早くに使うべきだった。 今度からはポケットに入れておこう。
ゴムもポケットのがいいかもしんない。

なんて、せめて1つ学習する。

ティッシュをふんだんに使って三橋の尻を丁寧に拭ってやった。
体を起こさせて、また出てきたオレのナニも鼻血を心配しながら全部きれいに拭き取ってやる。
砂は完全にきれいになったとは言えないけど、手ではらうよりずっとマシになった。 
少しホっとした。

「よし、いいぜもう穿いて」
「あ、ありがと。 阿部くん」

御礼なんて言われると余計落ち込むからやめて欲しい。 もちろんそんなこと言わないけど。
三橋がもたもたと穿き始めたんで、オレも自分のを拭ったらティッシュに砂がついた。
ため息が出そうになった。  何かもうどうしようもないって感じだ。
ベルトを締め直してから三橋の様子を窺うと、目がとろんとしている。 
立て続けに2回出したから眠いんだろう。

「・・・・・・・帰るか」
「う、うん」

使ったティッシュを全部丸めて、放置はダメだし、かといって
ポケットにしまう気にもなれないから手に持った。
今度こそ帰るために歩く途中で、ゴミ箱を見つけて放り込んだ。
雨はいつのまにかやんでいた。








○○○○○○

帰りの電車では2人揃って爆睡した。
目が覚めて外を見ると降りる駅の少し手前だった。
隣で寝こけている三橋の顔を眺めながら、放り出してあった心のメモ帳を開いてみる。

デートの計画 : 砂浜散策 → 甘い語らい → 夕陽をバックにチュー
  → 海の見えるレストランでディナー → ペンションにお泊り → いっしょに風呂
  → 熱い夜 → 翌日は適当に遊ぶ → 家までゲンミツに送る。

(1つもできてねえ・・・・・・・!!)

改めて、愕然とした。
唯一砂浜散策はしたと言えなくもないけど。  三橋はトレーニングと思ったみたいだし。

けど、予想もしていなかったオプションが付いた。
まるで起死回生逆転サヨナラ大ホームランみたいなやつが。
嬉しい反面微妙に複雑な気分になるのは何故かというと、自己嫌悪だけではなく。

(アレって正しいデートメニューと言えるんだろうか・・・・・・・・)

違うような気がすごくする。 デートに正しいも間違いもないだろうけど、
オレ的にはイレギュラーだ。
そりゃ嬉しかったけど。 
できたことがというより、あんな状況で三橋がオレを欲しがってくれたという事実が
信じられないくらい嬉しかったけど。

でも三橋だって、あんなにせかせかと外ですんじゃなくて
ちゃんと落ち着いた場所でゆっくりするほうがいいに決まってる。
第一あれじゃあ 「いれただけ」 って感じで情緒がないっつーか
刺激はあったけど、オレが今回求めていたのとは違うっつーか
もっとこう、ベタなデートをしてみたかったんだけど。

はあっと小さくため息をついてから、ハタと気が付いた。
まだ1つ残っている。 「家まで送る」ってやつが。
女の子じゃないのに送るのは変かもしれないけど
でも三橋はかわいいから痴漢に合わないとも限らない。  それは心配だし、
それにやっぱ正しいデートには必須って感じがするし、なによりそのほうが。

(・・・・・・いっしょにいられる時間が延びるし)

よし! と俄かに張り切ったところで降りる駅に着いた。






○○○○○○

三橋の遠慮は予測済みだったので。

「い、いいよ。 阿部くんが 遅くなる・・・・・・・」
「いいから!」

それ以上ごちゃごちゃと言い出す前にさっさと歩き出したら、諦めたのか大人しく付いてきた。
半歩分後ろの位置なのが気に食わなくて、わざと足を緩めたら
三橋も緩めるもんで並べない。 だもんでここでもイライラしてきた。

「・・・・・・あー まだるっこしい!」
「ひっ?!」

悲鳴には構わずに三橋の手を掴んだ。 ぐいっと引っ張って、隣に引き寄せる。

「・・・・・え・・・・・・・」

とまどったような声も無視する。
目の端に三橋のまん丸目を捉えながらオレは知らん振りしていた。
丸い目が見ている先はもちろん手、だ。
手を繋いで歩くことなんて、普段はない。
学校中の人間がオレたちの仲を知っていても、三橋が恥ずかしがるからだ。
でも今はもう真っ暗で、西浦の生徒なんてこんな時間には通りそうにない道で
人もほとんどいないし、せめて最後くらい正しいデートっぽいことをしても
バチは当たらないと思う。
手を繋ぐのは恋人としての基本中の基本なんだから、こういう日くらいさせてほしい。

心の中だけでまくし立てながら、ことさら強く握ったら意外にも握り返された。 びっくりした。

なんか、今日は意外な反応がたくさんある。 良い意味での。
それだけでも嬉しかったのに、さらに三橋は言った。

「・・・・きょ、今日 楽しかった、 ね!」
「・・・・・・そう?」

聞き返したのは本当に疑う気持ちが湧いたからだけど。

「うん!」
「・・・・・・・・・・。」

何度も頷く赤い顔を横目で見ながら、じんわりと温かい何かが胸に満ちてくる。
悲惨なデートだった  と思われても当然なのに、三橋は楽しかったと言う。
そしてそれはきっと嘘じゃない。
アクシデント満載で全然予定どおりいかなかったけど。
正しいデートって内容でもなかったけど。

でも三橋の良さをたくさん再認識できた。
それに、なんだかんだ言ってもオレも結局2人でいられれば何でもいいんだ。
雨だろうがトレーニングだろうが、代わり映えのないマックだろうが何でも。

「・・・・・・・そうだな、楽しかったな」

心からそう言った。
うへへ、 と笑う三橋の顔を見ながらオレも笑った。 幸せだった。
イレギュラーなアレも多分この先2度とないだろうし、
最高の思い出の1つになるに違いない。


家の前まで来ても、名残惜しくて手を離したくない。
ふいに、思いついた。 ここで優しくチューでもすればもう。

(・・・・・・完璧じゃねーか?)
 
密かにドキドキした。
なのでそのまま手を引いて何気なく暗がりのほうに移動した。
手を繋いだまま正面から見たら、三橋も逸らさずに見つめ返してくれた。

(よし! いける・・・・・!)

いい雰囲気に後押しされて、そっと顔を近づけたところで。
三橋は 「あ」 と思い出したような顔をしたかと思うと、口を開けた。

「あ、あのね、 阿部くん」
「・・・・・・・・なに?」

こっそり脱力しながらも意識して優しい声を出した。
最後くらい、いい雰囲気のままかっこよくキめたい。

「こ、今度 の 時は、ね」
「・・・・・・・・?」
「す、砂じゃなくて 草、 とかのが いい ね・・・・・・」
「・・・・・・・・!!!!!!」



いわゆる正しく完全無欠の予定だった本日のデートは結局

オレの盛大な流血で締めくくられた。















                                        正しいデートのありかた 了

                                           SS-B面TOPへ






                                                ポケットのティッシュが早速役に立った。