料理する






「やっぱ美味そうだな」


その時、何も身につけてないオレの手をベッドに押さえ付けて見下ろしながら
阿部くんは最初にそう言った。

次に  「今日は料理すっから」  と言って、笑った。

オレの料理なんて簡単だね、 と心の中だけで思ったら、まるでそれを読んだかのように
「体の料理は簡単」  と阿部くんは言ってまた楽しそうに笑った。
続いて  「難しいのはココロのお料理」  とよくわからないことを言った。

それなに?   と聞こうとしたけど、口を塞がれて聞けなくなった。


















○○○○○○

食べられている、というのが本当に一番しっくりくる。

阿部くんはオレを食べる、 んじゃないかという勢いでかぶりついている、
もんだから、 オレの理性は大分前から薄くなっちゃって
もういろいろなことがどうでもいい。  恥ずかしい、とか思う余裕すらない。

阿部くんは唇と舌と歯で獰猛な勢いで嬲っていて。

さっきから何だかヤらしい声が聞こえるなぁとぼんやり思ってから
自分が出しているんだと 気が付いた。
気付いても抑えることなんて全然できない。 そうしようという気力も湧かない。
そのうち後ろにも指が当たる感触があって。
あっ   と思った時はもう侵入してきた。

その指もたちまち一番感じるところまで入り込んできて、
最初はそろそろと、それからだんだんと強く刺激してくる。
前と後ろを同時に攻められるのは時々されることだけど。
今日は特に容赦なくてつらくて、無意識に体を捩って逃れようとしてしまった。

でもそれもやっぱり無駄に終わった。
阿部くんが片手で腰を掴んでいるせいもあるけど、快感が強すぎてろくに力が入らない。



涙が溢れて止まらなくなった。



「い、 や」


抗議の言葉も煽るだけの結果になる。
と、わかっていながら口が勝手に言ってしまう。

「も  う、  ゆ るして」

無駄と知りつつ途切れ途切れに言葉を搾り出すと、思いがけなく口が離れた。


「三橋」

優しい声がする。  返事をしようとしてしゃくり上げてしまった。

「・・・・・・・いやか?」

そうじゃなくて、    と言おうとしてやっぱり声にならない。
そうじゃなくて、 阿部くん、

「どうしてほしい?」

も  う、  いれて、  

と、ちゃんと言わないと  許してもらえないかなぁと、 思っていたら。

「オレが欲しい?」

ほ  し、  い

願いながらかろうじて、頷くことができた。

「じゃあ、うつ伏せになって」

言って阿部くんは後ろから指を抜いてくれた。
一瞬躊躇ったけど、言われたとおりにした。

「腰上げて?」

普段なら自分でなんて絶対できないけど、その時オレはもう欲しくて気が狂いそうだったので
またそのとおりにした。 でも。

「自分で、広げてみせて?」

そ、そんな、こと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「や・・・・だ・・・・・・」

できない、 と思ったのに。

「ちょっとでいいから」

また優しい声で言われて、もうどうでもいいやと、思ってしまった。
自分の手をお尻に持っていって、左右に、広げた。
阿部くんの視線を感じながら。
手がみっともなく震えているのが自分でわかった。
すぐにそこに舌が入り込んできて。

「あ    あ」

また我慢できなくて声が出る。
気持ちいいのもあるけど、もどかしくて、どうかなりそう。

「いれ  て」

聞かれる前にお願いしてしまう、 くらい体が切羽詰まっている。

「あべ、 く・・・・・・・・・お、 ねが・・・・・・・・・」

うわ言みたく、意思とは関係なく口が動く。
いつもは 思っても自分からは恥ずかしくてなかなか言えない、コトバ。

「は、早く、 いれ・・・・・・・・・」

オレ、いつのまにか料理されちゃったんだ。  

頭の片隅でちらりと思った。
だから普通はできないことができたり、言えたりしちゃうんだ・・・・・・・・・・・・・・・・

舌が離れてすぐに、熱い塊りが押し当てられた時、嬉しくて体が震えた。
ゆっくりと、入ってくる。

「は・・・・・・あ・・・・・・・」

安堵のため息が出た。
全部入ったところで、阿部くんのつぶやく声が聞こえた。


「すげー美味い・・・・・・」
「おまえ、最高・・・・・・・・・・・・」




できたから、 食べたんだな        とぼんやり思った。















                                               料理する 了

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