日常の出来事





まずキスを される。

最初は軽く。 触れるだけのキス。 柔らかいキス。
でもそれだけでもいつもドキドキする。
何度もしてるのに未だに緊張するんで、こないだ阿部くんに呆れられた。

すーっと、阿部くんの舌がオレの唇をなぞると、ぞくりと 肌が粟立つ。 それが合図だから。
それからするりと中に入り込んでくる。
その舌はオレの口の中を丹念になぞる。
すごく気持ちがいい。
ぼーっとしてるとオレの舌に絡み付いてきて、必死で応えていると
そのうちきゅうっと吸われる。
オレはこれに弱い。

変な声が出ちゃったりしていつも焦る。 けど。
もっと・・・・・とか思ったり。
阿部くんもそんなオレをもう知ってるから。 深く深く入り込んできて強く吸われて。
オレはもうキスだけで体がどんどん熱くなる。 立っていられなくなってきて、
阿部くんの背中とか腕にしがみついてかろうじて足を支えている。

唇を離されるとずるずると座り込みそうになってしまって。
でも阿部くんはそんなオレを支えてベッドに押し倒してくる。
手足の力を抜くことができてオレはホっとするんだけど。
またすぐに口を塞がれる。
同時に阿部くんの手が 服の中に入り込んできて、そろそろと肌を撫でる。

「ん」

(あ 声出ちゃった・・・・・・・・・)

別に触られて感じるとも思えないような場所でも。
阿部くんの手に触れられるととても気持ちいい。
心地よさにうっとりしていると胸の先端を摘まれた。
体が跳ねる、 くらい感じる。  
胸も。    自分で触っても全然感じないのに、阿部くんが触るとダメなんだ。

気が付くと阿部くんの唇が耳に移動した。
耳もすごく弱い。
耳たぶとか。 耳のうしろとか。 阿部くんは丹念に舌で舐める。
自分の息がどんどん荒くなるのがわかって恥ずかしいんだけど。
でも舌が耳の中に入ってくるともうどうでもよくなるくらい気持ちいい。
濡れた音がダイレクトに耳の中で響いてその音にも煽られる。
思わず顔をよじって逃げたくなるけど、阿部くんの手に顔を固定されて逃げられない。

まだ最初なのに。 オレは早くもおかしくなってしまう。
阿部くんは余裕なのに。

ようやく耳を解放されてホっとするまもなく今度は
首筋をすーっと舐められてまた体が勝手に跳ねた。

「おまえホント感じやすいよなぁ」

阿部くんが楽しそうに言う。
阿部くんは最近、してる最中にしゃべる。
最初の頃はそんなことなかったのに。
いつだったか 「オレだって前はそんな余裕なかったんだよ」 と言って笑ってた。
てことは今は余裕あるんだろうと、 思う。  オレは全然ダメなのに。
しかも最中って何だか恥ずかしいことを言う。
普段は絶対言わないようなことをわざと言うんで、 すごく  困る。

ぼーっとしてるうちにいつのまにかボタンを全部外されていた。
阿部くんは器用だ。

いつもはここで大体胸の先端を吸われたりするんだけど。
今日は違った。  ベルトを外す音がする。

(え・・・・・・・・・・)

少し慌てた。  下を脱がされるのは未だに緊張する。 恥ずかしいから。
自分で脱いだほうがマシ・・・・と思うのに
阿部くんは 「脱がせるの好き」 とか言ってやらせてくれない。
でもオレはもちろん抵抗なんてできない。
阿部くんはまた器用に全部脱がせて (オレも仕方なく協力するけど)
ズボンとか下着とかその辺に放り投げてしまう。
下着を下ろされる瞬間はいつもホントに恥ずかしい。  だって。
もうしっかり反応してる、 から。
でもオレは恥ずかしいけど阿部くんが嬉しそうな顔をするんで
まぁいいか・・・・・・・と思ったりする。
それにオレより阿部くんのほうが早く勃つ、ような気がする。
密着してるとすぐにわかっちゃう。
わかるように腰を押し付けてきたりするし。
おまけに 「オレもうこんなだぜ」 とか言ってにっこり笑ったりするし。
そうされるとオレは焦る。 というか恥ずかしい。
(阿部くんはオレのそういう様子を見るのが楽しいらしい。)

そんなことをぼんやり考えてたら阿部くんはオレの体を横向きにした。 
続いてはだけていたシャツをするりと取り去ってしまった。
シャツは全部脱がされないことも多いのに。
(半分だけ脱げているのが色っぽいんだ、 と前言われた)
今日はそれも取られた。
全部脱がされてオレは何も着てない のに。  阿部くんは全部着てる。  何だかずるい。

「阿部くんも・・・・脱いで、 よ」
「後でな。」

ずるい。
せめて足を閉じようとしたのに、阿部くんはそれを許してくれなかった。
オレの両足の間に入って座ってしまった。
それからオレの両手も下ろした状態のまま手首を掴んでベッドに押さえ付けた。
おれは全裸で、どこも隠せなくて、 そんなオレを阿部くんがじぃっと見下ろしている。
めちゃめちゃ恥ずかしい。
あぁだから、  と気付いた。  このために今日は全部脱がされたんだ。

「阿部くん・・・・・」

一応抗議してみる。 多分無駄だけど。

「なに?」
「・・・やだ・・・・・」
「いいじゃん。 見せてよ。」
(だから、ずるい・・・・・・・・・)

オレはもう恥ずかしくて目をぎゅうっと瞑って耐えた。
目を瞑ってもわかる。 阿部くんの視線がオレの体に注がれているのが。
いつも思うけど阿部くんの視線は強い。  肌がぴりぴりする。
そんなふうに感じるのってオレだけかな・・・・・・・・

「おまえ、体までピンクになってきた」

(そ、そういうこと言わないで・・・・・・・・・)

「すげぇきれい」

(気のせい、 だと思う・・・・・・・・・。)

「震えてるぜ?」

言いながら阿部くんの舌がオレの中心をぺろりと舐めた。

「あ!!」

いきなりだったから声が出ちゃった。 ますます恥ずかしい。
手は押さえられているから、唇を噛み締めた。
阿部くんが覆いかぶさってくる気配がした。

「口、噛むなってば・・・・・・」

言ってまた口付けてくる。
とりあえず嘗め回すような視線から逃れてホっとして、阿部くんの舌を受け入れた。
それから。
その舌がまた離れたなぁと思ったら今度こそ胸に移って。
散々嬲られた。
その間も指はオレの背骨とかわき腹とかさわさわとなぞってきて
もうどんどんまともな思考ができなくなってくる。

朦朧としていると阿部くんの顔が下のほうに移動していく、のがわかった。

いつもここで必ず我に返ってしまう。 だって何をされるかもう知ってるから。 恥ずかしいから。
だから無駄だと知りながらつい逃げようとしてしまう。
けど、もちろん許されない。
足を大きく開かされて阿部くんの肩にかけられてしまった。
腰をがっちり掴まれて慌てているうちに、阿部くんの舌がオレのものに絡みつく。

「あ・・・・あぁ!!」

声を抑える余裕もない。
先端を舌で丁寧に愛撫されて同時に根元を指で扱かれるともう。
すぐにも出ちゃいそうで。
我慢するだけで精一杯。

口では出るまでされないことが多いんだけど今日は違った。
阿部くんは舌でオレを嬲りながら空いている手を後ろに回して、そっと入り口をなぞってきた。

「・・・・あ・・・・・・・・・」

オレは焦った。 両方からされたら、絶対我慢できない。
でも逃げられない。 押さえられているからってのもあるけど。
気持ちよくて全然力が入らない。
なすすべもなく気持ちだけ慌てていると阿部くんが口を離して自分の指を舐めた。 (のをうっかり見てしまった)
すごくヤらしい。  阿部くんてしてる時ホントにヤらしい。 と思う。
でも多分絶対オレに見せ付けてるんだ。   オレが恥ずかしがるの知ってる、から。

「今日は先にイっていいぜ?」

(え? いいの?)

と思う間もなくその指が躊躇なくオレの中に入り込んできた。
最初はゆっくり。 確かめるみたいに。 それから動き出す。 
前もまた口に含まれてしまう。 指がどんどん奥に入る。
オレはもう感じすぎて堪えていた涙が零れてくる。

「イヤだ・・・・・・」

言うと阿部くんは必ず笑う。 楽しそうに。

「体は全然イヤがってないぜ。 三橋」

(わかってるけど・・・・・・。  は、恥ずかしいんだってば・・・・・・・・)

でもそんなこともちろん阿部くんだって知ってる。
だからすぐに指が 「そこ」 に来る。
もうバレてる。 オレが中だけでイケるくらい感じてしまうトコロ。 そこを容赦なく擦られた。

「は・・・・ぁ・・・・あ・・・・」

前と後ろを同時に嬲られるといろいろなことが我慢できない。
もういきそう。 阿部くんの口に出したくない、のに。
離して、 とか言っても無駄なのもわかってるし。

(あぁもうダメ、だ。 出ちゃう・・・・・・)

「・・・・・・・・・んん・・・・」

全身が震えた。

阿部くんがオレの出したのを口に含んでことさらゆっくり飲み込んだ。 (のをまた見てしまった)
オレはもういたたまれない。
「・・・・・にが」
とか言いながら楽しそうに笑う。 消えてなくなりたい。
両腕で顔を隠そうとしたら、阿部くんが上のほうに移動してきて腕を掴まれてしまった。

「三橋」

優しい声。

顔を顕わにされて、それから涙をぺろりと舐められた。
オレはもっといたたまれない。
思わず横向きになって丸まったら、阿部くんはさっさと自分の服を全部脱いだ。
ぼんやりと見とれてしまう。
オレより胸が厚くて腹筋が割れててとてもかっこいい。

(いいなぁ・・・・・・・)

ぼーっと見てたら阿部くんが今度はオレの背中のほうに来た。

(あ。 しまったオレ背中も弱い・・・・・・・・・)
と慌てた時にはもう遅くて、阿部くんの舌が今度は肩甲骨のあたりをなぞってきた。
今イったばかりなのに。
また感じてしまう。 また下半身に熱が集まる。
ちりっと痛みがあって強く吸われた、のがわかった。 ぞくっとした。 けど、 今の。

「阿部くん・・・・・」
「なに?」
「痕、付けた・・・・・・・・?」
「大丈夫」
「う」

そ、と言いかけた言葉は途中で止まってしまった。
阿部くんの手が後ろから伸びてきてオレの中心を掴んだから。

「・・・・・ふ・・・・・」

再びしっかり反応してしまう自分が嫌だ・・・・とアタマでは思うのに体が言うことをきかない。

「また勃ってきた・・・・・」

(い・・・言われると思った・・・・・・・・)

「ヤらしいな三橋」

(それは、 阿部くん。)

思うだけで言えない。 だってオレも同じだから。
何でこんなに簡単に反応しちゃうんだろう。   でもこれ絶対阿部くんのせい、だと思うんだけど。

「ぁあ・・・・あ」

じわりと、また涙がにじんできた。

「オレさ」
「・・・ん・・・・・」

話しながら阿部くんの手はどんどんオレを追い上げる。

「おまえが泣くのヤなんだけど。」
「・・・ぁ・・・・・・・」
「ベッドで泣くのは別なんだ。」
(・・・・・意地悪だ・・・・・・・・・)
「もっと乱れて、三橋」
イヤだよ・・・・・・・・・)
「めちゃめちゃにしてやりてぇ・・・・・・」
うっ)

一瞬 していいよ とか思ってしまった。
というか。 いつも容赦しない、クセに。  最中にイヤだって言って聞いてくれたことなんてあったっけ。
最初の頃だけだったような気が。

気がついたら阿部くんがローションを手に取っている。
そして予想どおりぬるりとした指が後ろからまたオレの中に入ってきた。
ローションのおかげでほとんど痛みがない。
それにさっき一度慣らされているから簡単に呑み込んでしまう。
阿部くんはすぐに指を2本に増やした。

「あ・・・・ん・・・・・・・・」

感じる場所にぱらぱらと指が当たる。 息がまたどんどん上がってくる。

「気持ちいい・・・・?」

そんなこと 聞かないでほしい。

「いい? 三橋」

オレは観念する。 でも実はもう快感が強くて 「恥ずかしい」 が大分薄れている。

「気持ち・・・・いい・・・・」
「・・・ここ?」
「・・・ん・・・・」
「こっちは?」
「あっ・・・・・・・・」
「いいんだ?」
「・・・・・・・・・。」

黙っていてもどうせバレる。 体のほうが正直だから。
オレはもうバカみたいに喘ぐしかできない。

「いれていい・・・・?」

律儀に阿部くんが聞いてきた。   早くいれて・・・・・・・・
なんて言えないから代わりにこくこくと頷いた。
体を仰向けにされて足を折り曲げられた。

(あぁこの体勢だと深くまで入るんだよね・・・・・・・・・・)
(気持ちいいけど後で少しきついんだ・・・・・・・・・)

ちらりと思ったけどもうどうでもいい。

「いっつも思うけど」

なんでしょう。

「おまえホント、体柔らかいよなぁ」

言いながら阿部くんが入り口にあてがってきた。  この瞬間だけはやっぱり緊張する。
だから阿部くんも慎重に入ってくる。 そうっと。

「・・・う・・・・」

それから1回止まって馴染むまでじっとしててくれる。

「平気・・・・・?」

こくこくとまた頷く。  平気。
ずっ  と、阿部くんが奥まで入ってきたのがわかった。

「は・・・・・・」

熱い。
ゆっくり動かれた。

「すげー気持ちいい・・・・」
(オレも)        なんて言えないけど。
「知ってる? おまえの中、すげぇ熱い・・・・・・・・」
阿部くんも熱い、 よ・・・・・・・・)
「ホント最高にイイ・・・・・・・・」
そういうこと言わないでほしい・・・・・・・)
恥ずかしいから。   嬉しいけど。

「つっても他のヤツとやったことねぇけど」
それが不思議・・・・・・・・・・)
「おまえも他のヤツにこんなことさせんなよ。」
させるわけ ない・・・・・・・)

「ん!!」

いきなり大きく動かれて変な声が出た。
おまけに阿部くんが回すように動いたもんだから。   ヤらしい音が。

「・・・・・音がしてる」

やっぱり言った。

(だからそういうこと言うのやめて・・・・・・・・・ )
なんてこともそのうち思えなくなった。
どんどん動かれて。  どんどん理性が霞んでいく。
朦朧としたアタマでもうこのまま阿部くんもいくんだな・・・・と思っていたら
唐突に すっと、抜かれた。

「あ!!」

抜かないで

危うく言いそうになった。 いきなり空虚になった。 その、あそこが。
びっくりして目を開いて阿部くんを見たら。

にっこり笑っている。 こういうときは大抵ろくなこと考えてない。

「な、たまには違うかっこでやらねぇ?」

(す っ ご く 楽しそうだね阿部くん・・・・・・・・・・・)

阿部くんはごろんと寝てしまった。

「おまえが乗って?」
(やっぱり・・・・・・・・・・)

できればイヤだ。 だってそのかっこだと。 オレのがその。 阿部くんから丸見えに。
それに自分で動けって言われるに決まってる。

でももうオレはさっきまでの充足感が欲しくて。
阿部くんが欲しくて。
あまり何も考えないようにして、言われたとおりに阿部くんの上に跨った。

阿部くんの。 改めて見るといつもどうしてこれが入るんだろうと不思議になる。
オレのより大きくて。
ちょっと悔しいけどオレのよりずっとリッパ。
それを自分で後ろに慎重にあてがって、そろそろと体を落とした。
阿部くんがまたじっとオレを見てる。
いつもそうだけど、今日は何だか特によく見られるような。
こういうのナントカっていうんじゃないのかな。  ナンだっけ。

ようやく全部入った。 多分すごく深く。 目を瞑ってはーっと安堵のため息をついた。
でも相変わらず視線を感じる。 阿部くんの視線。
してる時ってこの 「見られる」 のが一番恥ずかしい気がする。
羞恥に耐えていたら昂ぶりを手で包まれた。

「んぁ・・・・」
「すっげぇいい眺め」
(あぁ恥ずかしい・・・・・・・・・・・)
「動いて?」

やっぱり言われた。  恥ずかしいけど 少し、動いてみる。
気持ち、いい。
阿部くんの手がやわやわとオレのを愛撫する刺激も手伝って。 でも。

「もっと動かないとイけないだろ?」

(うんそう、 なんだけど。)
(・・・・・・恥ずかしいんだってば・・・・・・・・・)

また少しだけ動いてみる。 もどかしい。 でも恥ずかしい。
これ以上は    無理。

「恥ずかしい?」
「うん・・・・・」
「まだ理性あんだな。」

あります。 さっき1回抜かれたんで、戻ってきました。

「抜いたのがまずかったか。」

そうだと思う。

「失敗したな。」

どうだろう・・・・・・・・・。

「最初からこれにすれば良かったかな」

最初からだったらオレ無理だったと思う、けど。 (理性が邪魔して)

「まぁいいや」

ホっとした。 途端に。
いきなり下から激しく突き上げられた。 前も容赦なく手で締め付けられた。

「あぁあ!!!」

声が。 抑えられない。 気持ちよくて。
もう出ちゃう。 オレさっき出したばかりなのにもう。

頭の片隅で焦りながらも、  まるで堪えられずにあっけなくまた達してしまった。

「あ・・・・すげ・・・・・締まる・・・・・」

つぶやきが聞こえて阿部くんもその後まもなく達したみたいだった。
(ゴムしてるからよくわからないけど。)

「はぁ・・・・・・・・・・・・」

阿部くんがイくとオレはいつもホっとする。
だってオレの体なんかでイけるのかなって不安なんだもん。

安堵しつつもオレはもうぐったりして阿部くんの上に体を預けてしまった。
阿部くんの手がオレの背中に回るのを感じた。  そのまま強く抱き締められた。
こういう時幸せだなぁって思う。
なんてほんわかしていたら阿部くんが耳元でまた恥ずかしいことを囁いた。

「すげぇ色っぽかった。」
「・・・・・・。」
「オレ、おまえのイくときの声と顔だけでいけるかも。」
(ま、またそういうことを・・・・・・・・・)
「やっぱいいなこの体勢」

オレはヤなんだけど。
あ、 とそこで思い出した。   抜かなきゃ。
ぐずぐずしてるとまたそのままされかねない。 (前そういうことがあった)
オレ今日はもうダメ。

気付いて急いで起き上がろうとした。 のに。    阿部くんが離してくれない。

「阿部くん・・・・」
「ん?」
「離して・・・・・」
「やだ」
(やだって・・・・・・・・・)
「もう少しこのままでいて」
(え・・・・・・でも。 もう一回、とか言わない・・・かな・・・・・・・・・)
「ねぇあのさ」
「・・・・・・・。」
「もっかいしていい?」
(や、やっぱり・・・・・・)
「ダメ?」
「ダ、 ダメ!」
「なんで?」
だって。
「も、もう1回するとオレ明日きっと・・・・・・腰がだるくて・・・・」

そういえば阿部くんは1回出しただけだっけ。 でもオレもうダメ。  明日も練習がある、のに。

「うーん。」

阿部くんは唸った。 「明日」という言葉が効いたんだと思う。

「わかった」
(あぁ良かった・・・・ごめんね、阿部くん・・・・・・)

ようやく手を緩めてくれたんでオレは体を起こしてそーっと持ち上げた。
また阿部くんがじぃっと見てる。

(・・・・・・あぁもう・・・・・)

抜ける瞬間体が震えた。 快感の名残みたいなのが全身を満たす。
油断してると変な声が出るんで気をつけなきゃならないんだ。
阿部くんが 「ちぇ」 って顔した。  危なかった。

離れたオレは本当はまだぐったりしていたいんだけど
我慢して自分でティッシュを取ってさくさく後始末をする。
だってそうしないと阿部くんにされちゃうんだ。  ついでに変なことするに決まってる。
うっかりまた勃ったりしたら大変なことに。
阿部くんが面白くなさそうな顔して見てる、のが目の端に映ったけど。

「おまえ冷たいよな。」
「え・・・・・・」
「オレ、拭いてやりてぇのに。  させてくんないのな。」
(だって。 絶対ヤらしいことするじゃない・・・・・・か・・・・・・・・)

思いつつも 「冷たい」 と言われたオレは泣きそうになってしまう。
平気な顔しなきゃ。   こんなことくらいで泣くなんて情けなさ過ぎる。

オレは必死で何でもない顔をする。  でもダメなんだ。 阿部くんにはバレちゃうんだ。
阿部くんは慌てた顔になった。

「冗談だよ! バカだなおまえは!」

怒られちゃった。
けどこっそりしょげていたら抱き締めてくれた。 とても優しく。 優しいキスもしてくれる。
オレはこういうとき一番幸せで。
するのは気持ちいいけど (だから好きだけど) でも幸せな気分はこういう時のほうが大きいかも。
こんなに幸せでいいのかなと思ってしまう。
以前1回だけそれを言ったら阿部くんは怒ったみたいな顔になって
「いいに決まってんだろ!」  と言った。

そんなことを思い出しながらオレは安心して眠くなってきちゃった。

今日はこのまま泊まれるし (今日阿部くんちは誰もいない)。
でも・・・・・服着なきゃ・・・・と思ったけど。
(阿部くんの部屋にはオレ用のパジャマが置いてある。 ひよこ柄の。)
たまにはそのまま寝てもいいか、なんてふと思った。

だって阿部くんの腕がすごくあったかくて気持ちいいんだ。
できればこのままずっと。   こうしていたいなぁ・・・・・・・・・・



「おやすみ  廉」


阿部くんの優しい声が    聞こえたような気がした。














                                              日常の出来事 了

                                              SS-B面TOPへ







                                                   きっと朝起きて真っ赤になる。