溢れるとき






「知ってる?」      と阿部くんが笑う。


「オレすげぇ嫉妬深いんだぜ。」



うん・・・・・・・・・知ってる。
最初は、本当に、びっくりした。
阿部くんがそうだ、ということじゃなくて。
オレなんかのことでそんなふうに感じてくれる、 ってことが。


「だから本当は」
「・・・・・・ぁ・・・・」
「他のヤツと楽しそうに話してんのだけでも」
「・・・・ぅ・・・・・」
「アタマに、くる。」

そんなこと、言ったって・・・・・・・・・・・

「特に女と。」

オレ、もてない、よ・・・・・・・・・・・・・・

「ひとつになれたら、いいのに」

なってる・・・・・・・・・じゃない、か・・・・・・・・・・今  も。

「そういう意味じゃなくて。」
「・・・・・・は・・・・・・・」

「でもオレとおまえで1人になっちゃったらこんなこと、できねぇしな。」
「・・・・・・・・・・あ、  ぁ・・・・」
「キャッチボールもできねぇし。」



オレはもう何も考えられない。
揺さぶられながらぼんやりと阿部くんの言葉を聞いている。
麻薬のようなその。




「三橋」
「・・・・ん・・・・・・・・・」
「目ぇ開けて、オレを見て」


必死で目を開けた。

阿部くんの黒い目が オレを見つめている。

強い  目。       大好きな目。



「オレだけ、見て」



見てる  よ・・・・・・・・・・




その時の阿部くんの目は、何となく少し、寂しそうに 見えた。
なのでオレは言った。 
恥ずかしくて滅多に言えないコトバ。  でもそれしか言えない。



「す  き」
「・・・・・・・・・。」
「あべ、 くん。    だい す き・・・・・・・・・・」






ふっ  と阿部くんの目が潤んだ、      ような気が    した。















                                        溢れるとき  了

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