オマケその2






三橋は慌てた。
阿部の雰囲気がいきなり悲愴になったからだ。
漫画であれば、どんよりした背景効果が見えるような勢い。

「あ、あの 阿部くん怒って・・・・・」
「・・・・・怒ってねーよ」
「でででも」
「・・・・・・おまえには怒ってない」

あ、 と気付いて青くなった。

「ももももしかして泉くん に」
「・・・・・・怒ってるかも」
「えっ」

三橋はいっそう焦った。
わけもわからず言われたとおりにしたけど、何かが阿部の気に障ったらしい。
泉に迷惑がかかるのはイヤだし、その前に
阿部の表情が怒っているというよりは、どうにも悲しげなのが気になる。
どうすればその顔は晴れるのだろうか。
回らない頭で三橋は必死で考える。

「あの、オ、オレに できることがあれば・・・・・・」
「じゃあ今日オレんち来てよ」
「へ・・・・・・・」
「そんで 『トリック・オア・トリート』 って言って?」

え? ときょとんとした。
それはそもそも自分が言いたかったことでもある。
だってお菓子が欲しかったから。
誰に貰っても嬉しいけど、大好きな阿部から貰えたらそれは
きっととてもとても甘くて美味しいに違いない。
泉に禁止されたのが何故なのかも実はよくわからない。

「・・・・・えーと、ハロウィンだから?」
「そう! ハロウィンだから!!」

お祭りに参加したかったのかもしれない、と三橋は思った。
仲間外れにされるつらさは誰よりも知っているのに、悪いことをしてしまった。
元々言いたかったわけだし、
そうすることで阿部の怒りだの悲しみだのがなくなるのであれば。

「う、うん、 オレ行くよ! そんで、言う!」
「よし!!」

阿部の悲愴感が一気に消えたのを見て、三橋は心からホっとしたのだった。








                                                了

                                             SSTOPへ





                                                  と思ったら泉くんの負け。