阿部くんと部室で2人きりになってしまった。

珍しくないことのはずなのに何だか久し振りのような気がする。

緊張する・・・・・・・・


勝手に意識してしまう自分が滑稽だとは思うけど
狭いところで阿部くんと2人きり、というだけで何だかのぼせたような気分になってしまう。

どきどきして落ち着かないし、待たせてしまって申し訳ないし
早くしようと焦るんだけど焦ると却って手が上手く動いてくれない。


オレって本当にダメだな・・・・・・


謝ったら阿部くんが 「急がなくていい」 と言ってくれたその声がすごく優しく聞こえて
ホっとした。

でもやっぱりどこかで焦っていたんだと思う。
うっかりロッカーに指をひっかけて傷を作ってしまった。

阿部くんが側に来ちゃった・・・・・・・・。

ナサケナイことにそれだけでまたドキドキしてしまう。
しかも手を掴まれて。
触れられたところが熱くて (オレバカみたいだ・・・・・) もっとドキドキしていたら。

阿部くんがふと顔を下げた?  と思ったら


柔らかい感触が



指   に




・・・・あ。

へ、へ、変な声出ちゃった。  だって。
・・・・・・ぞくっとして。 阿部くんの舌が。 オレの指を。

ど・・ど・・ど・・どうしよう・・・顔が熱い・・・・・
オレきっと今すごくみっともない顔してる・・・・・・
へ・・・変に思われたら・・・・・・





思い切り焦りながら阿部くんの顔をちらりと見たら
阿部くんは何だかすごく怖い、顔をしていてびっくりした。

お、怒ってる・・・・・? ・・・・わけじゃない・・・・よね・・・・・
怖い・・・・・というのとも違うような・・・・・何だか・・・・・

あぁこの目・・・・いつか見たような気が・・・・・・・
いつだっけ・・・・・・えぇと・・・・・



ぼんやり考えながらオレはすごくおかしな気分になってきた。
というかさっきからおかしかったんだけどもっとひどく。

何だか体がどんどん熱くなってきて、心臓もますますうるさく。

こ、こ、これ阿部くんのせい・・・・だ・・・・・・・・
いやオレのせいだけど。
でもだって阿部くんの目がなんかちょっと。

そんな目で見られるとオレ。



せめて  も、もう少し離れてほしいんだけど。
オレ心臓が。
こ、こんなにうるさいと聞こえちゃう、かも。


手、も熱いし。

阿部くん、離してくれない・・・・・もうさっきからずっとすごく熱くて。




あ・・・あれ・・・・・・・?

何だか阿部くんがさっきより、その、近くに。

き、き、気のせい・・・・・・じゃない、よね。
それとも、これって夢なのかな・・・・・・・・・

オレもしかしていつのまにか寝ちゃってて夢でも見てるんじゃないのかな・・・・・・

なんかもう。これ以上阿部くんの目を見てるとオレちょっと、へ、変なこと期待しそう・・・・・・






そう思ったオレは反射的に目を瞑ってしまった。




















・・・・・・・・夢・・・・・?







・・・・・やっぱり・・・・・夢・・・・・・なのかな・・・・











え・・・・・っと・・・・・・














「ごめん」



阿部くんの声が聞こえた。
夢にしてはリアルな。






現実・・・・・?・・・なのかな・・・・・








オレはもうアタマの中真っ白で。

なんにも考えられなくて。




恥ずかしくて阿部くんの顔も全然見れなかったけど。








気がついたら涙がぽろりと、 零れ落ちていた。












                                                      了

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