2人で連れ立って帰る間阿部は無口だった。
三橋は時折阿部の顔を窺いながら、依然としてひそかに困惑していた。

結局阿部はあの後それ以上三橋を怒ることはなかったけれど。
言葉少なに 「帰ろう」 とつぶやいた顔は、ひどく憔悴して見えた。

三橋は視線を落とした。

何かはわからないけれど、自分の言葉か行動か何かが阿部の気に障ったんだろう
と沈んだ気持ちで考えた。
でもこれ以上何を言えば阿部が笑ってくれるのかわからない。


「あのさ、三橋」

阿部の呼びかけに三橋は弾かれたように顔を上げた。
このまま分かれるのがつらいような気がしていたからだ。

阿部は三橋をまっすぐに見ていた。
その顔は、思いがけなく穏やかなものだった。

「オレ、おまえのそうやって頑張るとこ、好きだよ」

えっ?  と驚きながらも三橋はたちまち嬉しくなった。
わかってもらえたのかもしれない。
だけでなく、認めてもらえたのかもしれない。
ホっとした気持ちそのままに弾んだ声が出た。

「う、うん、 オレ、頑張る、 よ!」

阿部は小さく微笑んだ。 それから言った。

「オレも、 頑張んなきゃな」
「へ?」

三橋は不思議に思った。
阿部はこれ以上何を頑張るのだろう。
第一、阿部が頑張ってしまうと自分と阿部との距離はちっとも縮まらないではないか。

そう慌てながらも。

さっきよりずっと明るく見える阿部の表情に気付いて、

わけがわからないなりに三橋はやっと、安心したのだった。













                                                     了

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