オマケ






「これでも子猫?」


あぁやっぱり言われた、    とオレは思った。

子猫なんて、夢に出てきたのは阿部くんじゃなくて猫で、すりすりしたのは子猫だったからで
別に阿部くんのが子猫と思ってるわけじゃ全然ないのに。

「なぁ三橋」

な、なんか答えないとダメなんだろうか。  何か別の生き物。
でも今ちょっとその。

「なんか言えったら」
「は・・・・・・・・・・・」

む、無理。
こんなで言葉なんて言えない、

というオレの内心の声に応えるかのように阿部くんは動きを止めた。
はーっと息をついた。
薄目を開けて見ると、阿部くんは期待満々な顔でオレをじぃっと見下ろしていたんで焦った。

えーと、なんか言わなくちゃ  えーと。
子猫じゃなくて えーと。

「な、なまこ・・・・・・・?」
「はぁ?!!!」

あ、ダメだった。 顔が怖くなっ・・・・・・・・・・・・・・・・・
だって似て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・あんなグロテスクじゃねー!!」

え、そうなの?  あ、オレ生きてるなまこってそういえばよく知らな・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、それともぶよぶよしてるってか・・・・・・・?」
「えっ」

ち、違・・・・・・・てか阿部くん、 顔  怖い よ・・・・・・・・・・・
硬くないとダメなのか。  硬いもの硬いもの硬い動物なんていたっけ・・・・・・・・?

「あ、 か、 亀!」
「亀ぇ・・・・・・?」
「う、  うん」
「・・・・・・そのまんまじゃねーか・・・・・・・」

えっ   そのまんまって何で。
あ、そうか亀ってあそこの名前の何だっけ、えーとキトウ? って亀って字? だっけ? あれ?

「つかなんかさ、なまことかウミウシとか亀とかひどくね?」

う、 ウミウシなんて オレ、 言ってな・・・・・・・・・・・・

「だからさ、イメージを聞いてんだけどオレは!!!」

イメージ・・・・・・・・・・・

「その線でなんかねーの?」

イメージ・・・・・・・・イメージ・・・・・・・・・・・えーと。

つ、強そうなのがいいんだろうか。
強い動物強い動物って えーと

ラ、ライオン? かな? でもアレがライオンて変じゃないか、な?
ライオンだったら虎とか豹とか他にも似たようなのがいろいろいるしどれがいいのか
それにこないだ見たテレビでライオンが蟻の大群に食べられて・・・・・・・・・・・・・

じゃあ蟻?
いや蟻なんてダメダメ絶対ダメ小さいからダメ
昆虫もありなら一番強いんじゃないかってのはあの、台所にいるあの、
あぁでもダメだ ってか違うそうじゃなくてイメージだから合わないにも程が
昆虫はやっぱ変だやっぱ動物だ動物で何か
か、か、火星人とかダメかなオレのイメージだとありなんだけどでもきっとダメだ
かっこよくないし強くもないからダメダメ他に何か動物動物

あぁどうしよう阿部くんの顔がどんどん険しくなる早く何か言わないと
阿部くんが満足するような強くてかっこよくて硬くて  えーと何かないか何か


「あ・・・・・・・・・・」

阿部くんが突然変な声を出した。

「う?」

それでオレも自分の状態に気付いた。




萎え     ちゃっ     た。




「・・・・・・・・・三橋・・・・・・・・」
「あ、あのこれは」
「・・・・・・・コノヤロウ・・・・・・・」
「あ、ごめ、 てかあの、 オレ 違くてその」
「・・・・・・いい度胸してんじゃねーか・・・・・・・」
「わ、わざとじゃ、   あ、だから  か、考えてると頭のほうに  血が」
「もういい黙れ」
「え、  あっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あ、   あ、   ふぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あっ   ヤダ     あぁっ」






その後オレはなーーーーんにも考えられなくなって。



気付いたら翌日の朝だった。



「おはよ」

爽やかな声に隣を見ると、満面の笑顔の阿部くんがオレを見ていた。


「子猫だった?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・阿部くん、 しつこい。













                                                 オマケ 了

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                                                      根に持ったらしい。