葛藤





最初はこんなはずじゃなかった。

オレはいいピッチャーを求めていただけだ。
三橋はオレにとって理想的な相棒で、それだけのはずだった。
いや、むしろあの相当問題のある性格ではこの先どうなるんだと、
本気でうんざりしたこともあったのに。

あいつを勝たせてやりたいと思う。
半端じゃない努力を実らせてやりたい。
そんで、もっと自信を持たせてやりたい。
自分のことダメピーだなんて思ってほしくない。
もっと笑ってほしい。
自信なさげな、頼りなげな笑みじゃなくて心の底からの幸せな笑顔が見たい。

・・・・・・・そこまでで止まっておけば良かったのに。

どうして  こんな気持ち抱いちゃったんだろう。


大きな茶色い目も  ぽやぽやした髪も  白い肌も  細い体も。

心も。

全部全部自分のにしたい  なんて。

野球のうえだけじゃ足りない  なんて。




どんなに




どんなに好きでも




想いがかなう日が来るとは思えない  のに。




他のヤツと仲良く話してるのを見ると何となく面白くない。
あいつにとっては喜んでやらなくちゃならないことのはずなのに。

中学の3年間どれだけ寂しかったろう。
本人にも問題はあったかもしれないけど、
環境のせいだってあったわけだろ。
マウンドに執着するのは投手としてはいい資質なのに。
それなのにずっと嫌われていた3年間はどんなだったろう。
中学の分までここでは温かい環境になればいいと  本気で思っているのに。


これは嫉妬なんだって今はもうわかってる。
体の内側から腐っていくみたいな感覚。
オレのことだけ見てほしい。
オレのこと特別だって思ってほしい。  ・・・・・・・・野球でだけじゃなく。


あいつに優しくしてやりたい。
嬉しそうに笑ってほしい。
本当に、心からそう願っているのに。



時々。

めちゃめちゃにしてやりたくなる。
一生忘れられないような キズを 負わせてやりたい    とか 思っちまう。


・・・・・・・・いつかあいつのこと本当に傷つけそうで怖い。
そんなことになったら  オレは。
絶対自分を許せない。   多分、一生後悔する。  わかっているのに。



何もかもどうでもよくなる瞬間がある。
だから本当は傍にいたいのに。

・・・・・傍にいたくない・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・どうしてオレってこうなんかな。
こんなんでずっと何食わぬ顔して付き合ってなんかいけるのかな。
オレそんなに器用じゃない・・・・・・・・・・よな多分。





いつか。


このどろどろしたもんが 爆発するかもしれない。

そしたら。



オレは、そんで三橋は、どうなっちゃうんだろう・・・・・・。



オレは、  あいつを、・・・・・・・・・・・・失う・・・・のかな・・・・・・・・・・








オレはその瞬間が






何より怖い














                                                       葛藤 了

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