自覚-3






あいつが必死になって逃げている。
あいつを追いかけているのはオレ だ。
追いかけて追い詰めて腕を掴んで無理矢理こっちを向かせた。
乱暴にシャツを引きちぎる。
ボタンがはじけて宙に飛んで白い体が晒された。
足をかけてよろめいたところを押し倒す。
あいつは恐怖で声も出ない。
それでも必死になってオレを押し返そうとする手を両方いっぺんに掴んで抵抗を封じて
ズボンのベルトを外した。
あいつの目から涙が溢れてくるのが見えるけど、構わずに全部脱がせた。
いやだと、全身で訴えているのを無視して
両足の膝の裏を掴んで大きく左右に開かせた。








********


ガバっと跳ね起きた。 (文字どおり飛び起きた)
心臓が爆発しそう。

「うーわー・・・・・・」

最近は滅多になかった下半身のお馴染みの不快な感覚に、オレはうんざりした。

(・・・・・というか今の夢・・・・・・・)

「ヤバ・・・・・・・・」

昨日はあれからとっとと家に帰って
自分の気持ちにちゃんと向き合うことを無意識に避けて
何も考えないように、普段はほとんど見ないお笑い番組なんか見てさっさと寝てしまった。

でも夢は正直だった。

流石にごまかすのも限界だと思い知る。
もう認めるしかない。


オレはあいつが。

(好き   なんだ・・・・・・・・・・・・・)


ぼんやりと、今までの自分の行動とか感じたことのあれこれを思い起こして
何で今まで気付かなかったのかと我ながら呆れた。
認めてしまえば思い当たることが多すぎる。
花井が時々妙な顔をしていたことも今となっては納得だ。

気付かなかったんじゃなくて、気付かないフリをしていただけかもしれない。
だって認めたくなんかなかった。

何でよりによってあいつなんだ。
同じ部で、しかも相棒で、これから少なくとも卒業までは一番身近で付き合っていくヤツ。
それはまだいい。
問題は。

「・・・・男なのに・・・・・・」

望みが少なすぎる。
少ないなんてレベルじゃないだろう。 多分、ダメだ。

オレはこの先このやましい気持ちをずっと隠しながら
あいつと普通に付き合っていかなければならないんだと思ったら。

絶望感に打ちのめされた。

そんなことできるだろうか。
とても自信ない。
でもあいつを失いたくない。
あいつの球を受け続けたいし、そうすると約束もした。


「どうすればいいんだ・・・・・・」


答えの出ない葛藤を抱えながら
オレはその後朝まで一睡もできなかった。










                                                  自覚-3 了

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                                     普通はダメだと思います。