オマケ






三橋が部室から出て行こうとしている。
でもオレは脱力しているせいで動けない。
立って、いっしょに出て、練習に入らなきゃと思いながらも動けない。

と、三橋がおずおずと戻ってきた。 心配そうな顔でオレの顔を覗き込んだ。

「阿部くん、元気ない・・・・・・・?」

(ねーよ。)

「オレ、のせい・・・・・?」

(まーな。 でももういいよ。 普通に考えれば無理だもんな。)

思いながら笑いかけてやった。 我ながら力のない笑顔になった気がする。
三橋の顔がますます曇った。

(そんな顔すんなよ。 オレもちょっと夢見過ぎていたしさ・・・・・・・)

「あ、あの、オレに、できることない・・・・・?」

(じゃあキスでもして。 それで元気出るから。)

冗談で考えた。
それから  腐ってないで真面目にちゃんとしよう、 とぼんやり思った。
立ち上がろうとして、顔を上げたら。
三橋の顔が至近距離にあった。

え?  と思った時にはもう唇に柔らかい感触が当たっていて。

またたくまに離れていった。

三橋は電光石火でオレに背を向けたけど。

その耳が見事にまっかっかで。

「ご、ごめん、 ね。   オレ、 わ、 わかんなくて」

ごにょごにょとそうつぶやいたかと思うと、ばびゅっと出て行ってしまった。
オレはぽかんと口を開けてその場に座り込んでいて。

それからすごい勢いで頬が熱くなった。
同時に顔がにやけてくるのが自分でわかった。
抑えても抑えても口元がだらしなく緩んでしまって。

(まだもう少し出られないな・・・・・・・・・・・・・)

なんて思った。










                                         オマケ  了 

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                                                     復活。