オマケ






水谷が明るいのはいつものことだ。
時に話題がおちゃらけるのもよくあることだ。
阿部の目の下にクマがあるのも、これはよくあるってわけじゃないけど
たまにはそういう日もある。 でも今日はあるだけじゃなく、やけに濃い。

と見てとった時点で花井は第三者を決め込んだ。
弁当をわざとゆっくり食べているのは、食べるのに忙しくて話せませんよ、
のポーズである。 従って会話は水谷と阿部のみになった。

「かわいい子と綺麗な子とどっちのが好み?」
「さあ・・・・・・」
「活発タイプとおしとやかタイプでは?」
「さあ・・・・・・」
「・・・・・・じゃあスタイルとかにこだわる?」
「さあ・・・・・・」
「阿部、なんだよーそのつれない反応」
「・・・・・・好きになったらそれが一番だろ」
「おおっ 言うねえ」
「でも天然はやめたほうがいいな」
「へ?」
「なんつーか、天然は良くねーよ、うん」
「ふーん、阿部は天然タイプが嫌いなんだ」
「誰もそんなことは言ってない!!!!」
「わあ」

水谷がびっくりして飛び上がったのも無理ないという剣幕だ。

「あー、びっくりした」
「嫌いじゃない、いやむしろ」
「好き?」
「消耗する・・・・・・・」
「はあ?」
「衝動が問題なんだ」
「衝動?」
「精神力が鍛えられるっつーか」
「・・・・阿部、鍛えられてんの?」
「毎日毎日毎日」
「・・・・・そんで不幸なんだ?」
「そんなことはない!!!!」
「わっ」

水谷はまた飛び上がった。 
それでも懲りない辺りは流石というべきか別の形容詞が適切か花井は悩む。
悩みながらも オレは咀嚼に忙しい、という顔だけは忘れない。

「じゃあ幸せなんだ?」
「疲れてる・・・・・・・・」
「なんで?」
「どう解釈したらいいのかわからん」
「え??」
「あれは、もしかして、いやでも、」
「・・・・・阿部?」
「難しいんだよなあ」
「何が?」
「いや分かってる。 他意はねーんだ。 わかってるんだ!!!!」

どん! と机が叩かれて水谷が飛び上がるのも3度目だ。
衝撃でいっしょに飛び上がって倒れたパックの茶を、花井は黙って元に戻した。

「・・・・・・阿部、大丈夫?」
「全然大丈夫!!!!」
「・・・・・・それは良かった」
「オレはまだ我慢できる。 大丈夫だ!!」
「・・・・・今なんの話してたっけ・・・・・」
「さあ」

もうやめろよ、と花井は思った。









                                           オマケ 了

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                                                   噛み合わないにも程が。