罰ゲーム オマケ





「本当に冗談なんだな?!」
「本当だって! だから罰ゲームだったんだって!!」
「・・・・・人をダシにして遊ぶなよな・・・・・」
「それはマジで悪かったよ」

花井は必死だ。

「本当に、 してない、・・・・・だろうな・・・・・・・?」

し、しつこい、 と思いながらも花井は思わず本音の抗議をした。

「大体さ、阿部はオレがマジでそんなことすると思うか?」
「!!」
「おまえらのことをすごーく前から知っているオレがさ。」
「・・・・・・・・・・。」
「冗談でも三橋に手を出すなんてこと、すると、本気で疑ってる・・・・?」
「・・・・・・・いや。」

阿部の返答は大きくはなかったけど、迷いもなかった。
花井は少なからずホっとした。
なぜなら阿部のことはいろいろと大変なことも多いけど (主に三橋のことで)
基本的にいいヤツだと思っているし、友人だと自分では思っていたから。
それに何より 三橋と阿部のことは自分なりに心配して
2人が恋人になるずっと前から見守ってきたのだ。

カッカしていた阿部も花井の言葉でそれを思い出したのか、
さっきまでの形相が嘘のように穏やかな表情になった。
だけでなく、僅かにではあったがバツの悪そうな顔になった。

「疑って悪かったな、花井」
「や、まぁいいけどさ・・・・・・」

言いながら花井は、ふと思いついたことを何気なく口に出した。

「阿部ってさ。」
「なに」
「99%ないとは思うけど」
「・・・・・?」
「もし、野球部の誰かが三橋に惚れて迫ったりしたらどうすんの・・・・・・・?」

阿部はまた大分険悪な顔になった。
花井は少し後悔した。

「・・・・・・・・・オレ、野球部は大事なんだ」
「う、うん」
「でもそんなことになったら」
「・・・・・・・・・。」
「どうなるか自分でもわかんねぇ・・・・・・・・」

阿部の暗ーい顔を見て花井は慌てて言った。

「や、変なこと聞いて悪かった。 まぁないから大丈夫だよ!!」
「そうかな」
「え」
「あいつかわいいから」
「・・・・・・・。」
「オレたちの学年は大丈夫だろうけど。」
「うん」
「これから後輩とかも入るし」
「・・・・・・・・・。」
「いや野球部じゃなくてもクラスとか」
「・・・・・・・・・・・。」
「男じゃなくても普通に女とか」
「はぁ」
「誰かが横からちょっかいかけてきたらヤだなって、いっつも気が気じゃねぇ・・・・・・・」

あぁそう、  と花井は思った。
そして小さくため息をつきながらしみじみと考えた。

阿部の三橋バカは今に始まったことじゃないけど。
そんなに心配することないんじゃないの?
と言ったところで阿部が安心できるわけもないのだ。
阿部は掛け値なしに真剣なのだ。
花井にはそれがわかるから他人事ながら 「大変だな」 と思う。

以前はそんな阿部に呆れることが多かった。   でも今は。
その、はた迷惑なくらいの独占欲とそれを隠すこともできない強いまっすぐな恋情に
花井はむしろ感心してしまうのだ。

そして多分。

常々困ったもんだと思う、阿部のそんなところこそ、
人間的に一番好ましく感じる部分でもあるんだろうな   と
その時花井は内心でこっそりと悟ってしまったのである。










                                            オマケ 了

                                            SSTOPへ








                                           一皮むけちゃった花井くんでした。