「阿部!!!!!!!!」

声と同時に後頭部をどつかれた、その手の力が情け容赦なかったので。

はっと我に返った。
くらくらする頭に手をやりながら周りを見回すと、その場にいた全員がオレをじっと見ている。
1人だけ背後にいるところを見ると、どついたのは泉だったらしい。

(えーと・・・・・・・・・)

もう1人のオレなんかどこにもいない。 当たり前だ。
泉のネタ振りのせいで、ついあれこれと想像してしまった。
いつのまにか入り込み過ぎた。 

と気付きながらもまだよく頭が回らない。 半分くらいは寝ていたのかもしれない。

「・・・・・・阿部、・・・・・おまえ大丈夫か・・・・・?」

恐る恐るという感じで聞いてくる花井の顔色が悪い。
目も怯えているような。  そんなに変だったのかなオレ。

「大丈夫」

はーっと安堵のため息を漏らしたのは隣にいる三橋だ。
ついさっきまでオレの頭の中で涙目で困っていたりかわいらしく眠っていた三橋はもちろん、
現実では教科書を前にしてホっとしたような顔でオレを見ている。

「あー怖かった」

水谷の言葉に思わず聞いた。

「オレ、目ぇ開けてた?」
「半分くらい」
「そんなに変だった・・・・?」
「「「「「「変だった」」」」」」

そんな一斉に言い切らなくても、と抗議するヒマもなく続いて矢継ぎ早に文句を言われた。

「目が空ろだし」
「いや空ろなんてもんじゃない、イっちゃってた」
「ニヤーっと不気味に笑うし」
「その後鬼みたいな顔になるし」
「何度呼んでも返事しねーし」
「幽体離脱でもしたかと思ったよオレ」
「いやオレはもうついに狂ったかと」

「・・・・・・・・・・ふぅん・・・・・・・」

としか言えない。 言い訳もできないし。
オレがそれ以上何も言わなかったので、皆はそれぞれ気を取り直したように
勉強の続きに戻った。 三橋も戻った。
その横顔をじっと見てたら視線を感じたのか、こっちを見た。  声を潜めて囁いた。

「やっぱさっきのやめる」
「へ・・・・?」
「もしオレがもう1人いたら、ての」
「え」
「オレには無理だ」

大真面目に前言撤回したら三橋はさっきと同じように赤くなった。
その様を楽しく眺めながら、しみじみと思った。
オレしか知らない三橋のあれこれは、たとえ同じオレだろうが見せたくないし
声も聞かせたくない。
ついでに言えば猫だろうが犬だろうが鳥だろうがダンゴ虫だろうが、イヤだ。
オレがオレだけで、本当に良かった。
もう1人オレがいたらそれは最大のライバルになるということだから。

「オレはオレ1人でいいや・・・・・・・・・・・・」

という結論になったんである。












                                          阿部君の結論 了

                                           SSTOPへ






                                                   どこに突っ込んでいいのやら