三橋は心からホっとしていた。

久し振りに阿部と並んで帰りながら、
今日からは きっと眠れるな   と考えていた。
その時、阿部がつぶやくような声で言った。

「あのさ、三橋」
「へ?」
「・・・・・・・見られたやつってホントに顔だけだから」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「わかんねーくらいのだからさ」


三橋は阿部を避けていた間 ぐるぐると考えていたことを、勇気を出して口にした。


「・・・・・・・でも」
「うん」
「顔だけでも、   オレ」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・阿部くん、 以外の人に・・・・・・・見せたくない・・・・・・・・・」


途端に阿部は顔をそむけて俯いてしまった。
そのままむっつりと  黙り込んだ。
三橋は不安になった。

「あの」
「・・・・・・・・・・・。」
「ご、ごめ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・なんで謝んだ」

その声が変に掠れているのに気付いて、三橋は驚いて言葉を失った。

阿部もそれ以上何も言わなかった。

2人で黙ったまま、並んでもくもくと歩いた。




このままいつまでも、  並んで歩き続けられたらいいのに。


ふと、 そんなことを三橋は思った。









                                                 了

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